全国で評判を呼ぶ“いのちのスープ”の生みの親である料理家・辰巳芳子の姿や考え方を捉えたドキュメンタリー。農と食を通して、人の命の尊厳を改めて考え直す。「映画 ひみつのアッコちゃん」の谷原章介がナレーションを担当。朗読は「武士の家計簿」の草笛光子。監督はNHKで数々のドキュメンタリーを手掛けてきた河邑厚徳。
ストーリー
日本の食に提言を続ける料理家・辰巳芳子。彼女が病床の父のために工夫を凝らして作り続けたスープは、やがて人々を癒す“いのちのスープ”と呼ばれるようになり、今では多くの人々が深い関心を寄せている。いのちの始まりに母乳があり、終わりに唇をしめらす末期の水がある。人の命は絶えることのない水の流れに寄り添って健やかに流れる。本作で描かれる辰巳のスープにも長い物語がある。調理に至る前には、海や田畑など日本の風土が生み出す生産の現場があり、調理後にはスープを口にする家庭や施設、病院など多様な人の絆が見えてくる。脳梗塞で倒れ、嚥下障害(えんげしょうがい)により食べる楽しみを奪われた父。その最後の日々を支えたのが、料理研究家の草分けだった母・浜子とともに工夫して作った様々なスープだった。これがいのちのスープの原点となる。スープに使う食材を作り出す全国の生産者たちは、作物に対する誠実な志を持ち、辰巳に食材を提供する。旬の作物を育てる繊細で美しい自然風土。それぞれの素材や性質を生かして、嬉しそうな表情で丁寧に調理する辰巳。幼児から老人まで、スープを口にする人々の姿が、交響曲のようにいのちの響きを奏でてゆく。ここで描かれるスープの物語は、辰巳が唱える“いのちと愛”への道筋を、食を通して示してくれる。