2006年5月に始まり、13年冬にも判決を迎える泉南アスベスト国家賠償請求訴訟に密着したドキュメンタリー。映画は2008年7月の原告弁護団活動から追い始め、アスベストによる健康被害の現状もカメラにとらえる。監督・撮影は、「ゆきゆきて、神軍」、「全身小説家」で知られるドキュメンタリー界の鬼才・原一男。
ストーリー
2008年7月、泉南アスベスト訴訟の原告弁護活動からこの映画は始まる。2006年5月に大阪地裁に提訴した第一陣訴訟は、2010年5月28日の判決で、裁判所はアスベスト被害で初めて国の責任を認め、原告らへの賠償を命じる。工場周辺住民に対する国の責任については認めなかったが、原告勝訴の判決だった。国が控訴するか否か、東京で待ち受ける弁護団の緊迫した姿、国の控訴に対する怒りの声もカメラはとらえている。2011年8月25日、大阪高等裁判所は、原告逆転敗訴の判決を下す。原告は自らその言葉で、その本質を糾弾する。逆転敗訴した一陣の控訴審判決の7ヶ月後、2012年3月28日の地裁判決では、経済的発展を理由に労働者の健康を蔑ろにすることは許されないという勝訴判決を勝ち取るが、損害額を3分の1に減額するなどの後退もあった。またこの映画では、アスベストによる健康被害の現状も映し出す。呼吸器官の肺への疾患として苦しみ、酸素吸入器が手放せない患者もいる。酸素吸入器を持ち込めない風呂場で、入浴中にせき込み苦しむ原告の姿は、この作品中の最も印象に残るシーンとなっている。原告団の大阪のおばちゃん、とりわけ泉州のおばちゃんは元気でたくましい。大阪弁の大衆性と親しみやすさは、なごむことができる。秘められた悲しさもうかがえるが、国を相手に戦うしたたかさも持っているのである。