裕木奈江
女
1996年に石井聰亙(現:岳龍)監督が塾長を務めた映画ワークショップ「福岡実践映画塾」での一般公募により採用された脚本を元に製作された短編映画。監督はこの脚本を書いた浦辻純子(現:花野純子)でこれが監督デビュー作。出演は裕木奈江、金沢賢治。ビデオ(パートフィルム)。2007年9月1日、福岡県・福岡市美術館にて上映。
木枯らしの吹きすさぶ寒い夜。女が家に帰り着くとそこに見知らぬ男がいた。女の問いかけにも答えず、唄い続ける男。男はミュージシャン崩れのホームレス。結局、一晩男を泊めてしまった女はこの無口な男といることに不思議なやすらぎを感じ始めていた。女は男・イチローに同居をもちかける。女の奇妙なまでの強引さに押し切られるようにしぶしぶ従うイチローだったが、ふとした拍子に女が世間を騒がせている指名手配中の結婚詐欺師だと知り驚く。男達から大金を巻き上げ、逃亡の果てにここにたどり着いたのだ。自分の事を知られて女はイチローにこんな提案を持ちかけた。「あたしと結婚して!二人で外国に行ってのんびり暮らそうよ!」 男の意志をまるで無視して偽のパスポートまで準備しようとする女。どこまでも冷たく広大な星空の下で、女の歯車はゆっくりと狂い始めていた…。
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