世界的に有名な演出家ピーター・ブルックによる2週間のワークショップを撮影したドキュメンタリー。目に見えないロープで綱渡りをする即興エクササイズの様子をカメラに収めた。監督は、息子でドキュメンタリー映画監督のサイモン・ブルック。2012年ヴェネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門出品作品。
ストーリー
“なにもない空間”という演劇論に基づき、最小限の装置と小道具、俳優の肉体から、イマジネーション豊かな劇空間を生み出す舞台によって世界中の観客を魅了してきた演出家ピーター・ブルック。演劇史に名を残す偉大な彼の舞台は、「魔術的舞台」とも呼ばれている。それらは、俳優やミュージシャンらが参加するワークショップから生まれる。本作は、その秘められた創作現場の様子を初めてドキュメンタリー映画として映像化した。ピーター・ブルック作品でおなじみの笈田ヨシをはじめ、あらゆる国籍の俳優たちが一堂に会して行われた2週間ものワークショップは、床に敷かれた1枚のカーペットに、目に見えない1本のロープを引くところから始まる。タイトロープ(綱渡り)は一見すると単純なエクササイズのようだが、俳優の想像力の真実を暴き、身体が生命を宿しその想像力と一体になっているかどうかを全てさらけ出す、演技の原点ともいえるものに繋がってゆく。そしてこの掟破りの即興エクササイズは、役者だけでなく、私たちの終わりのない人生の挑戦へのヒントがたくさん詰まっているのだった。