太平洋戦争当時、特攻兵器“桜花”の拠点となった神雷部隊で、出撃要員の選出に携わった元海軍大尉・林冨士夫に迫ったドキュメンタリー。本人へのインタビューを通して、桜花による特攻の真実、林自身が長年抱え続けてきた特攻に対する想いが明かされてゆく。メガホンを取ったのは、河瀬直美監督「2つ目の窓」、「あん」、黒沢清監督「岸辺の旅」などの作品をプロデュースしてきた澤田正道。
ストーリー
林冨士夫は、“人間爆弾”と呼ばれた特攻兵器“桜花”の第一志願兵だった。攻撃部隊の正式名称は“神雷部隊桜花隊”。特攻は志願だったが、出撃日時は命令によって決められた。当時、海軍大尉だった林は、隊員の中から出撃要員を選出し、その名を黒板に書き、多くの同志たちを死へ送り出す役目を担っていた。出撃者を送り出した後、誰もいない場所に独り駆け込み、尽きぬ涙を流しながら。若き日の林は、バイオリニストか声楽家になることを望んでいた。しかし戦争という大きな壁が、その前に立ち塞がる。父親が軍人だった影響もあり、東京帝国大学よりも難関と言われた海軍兵学校へ進学。やがて飛行機に魅せられ、1944年に飛行学生を卒業。筑波海軍航空隊に配属されると間もなく、士官たちが集まる会議に招集され、新兵器“桜花”の構想を聞かされる。参加者の中から最低2名の賛同が得られれば、それを根拠に桜花作戦を決行するという話だった。日本の行く末、家族、自分自身の未来……。“人生最長の3日間”と後に述懐する苦悶の時を経て、林は最初の特攻志願者となる決意を固める。こうして、世界初の特攻兵器“桜花”が実戦投入されることとなった。だが、自分たちの命と引き換えにした新兵器を間近に見た林は“これが俺たちの棺桶になるのか。”と落胆したという。林に与えられた第一の任務は、特攻志願兵たちへの飛行テクニックの教育と有人誘導する兵士の育成。第二の任務は、志願者の名簿から翌日の出撃者を選出し、送り出すこと。当時、神雷部隊は、鹿児島県鹿屋の小学校校舎を兵舎として使用していた。仲間たちを死へ送り出し、絶望的な戦局の中で、林は自分の行く時を必死に探し求めたが、果たせぬまま戦争は終結。敗戦の混乱、激動の時代を経て、林は神雷部隊での1年半と向き合い、その記憶を語り継ぐことを自身に課していく。その中で、彼は天皇に対しても無念の思いを吐露する……。
スタッフ
監督、プロデューサー、取材
澤田正道
撮影
ジョゼ・デエー
編集
渡辺純子
編集
大木宏斗
録音
高田林
チーフ助監督
古堅奎
プロデューサー
アンヌ・ペルノー
ラインプロデューサー
天田暦
ラインプロデューサー
ローラン・アルジャニ
挿入歌
ロベルト・シューマン
音編集
アレクサンドル・エケール
ミキシング
マチュー・ラングレ
カラコレ
ニコラ・ペレ
取材