種から育てた材料がカレーライスになるまでの過程を通じて、“命を食べて生きる”という人間の基本的な営みを見つめ直すドキュメンタリー。武蔵野美術大学教授で探検家の関野吉晴は、学生たちと“カレーライスを一から作ってみる”という試みに挑戦する。監督は、数々のテレビドキュメンタリーを手掛け、「園子温という生きもの」ではプロデューサーを務めた前田亜紀。
ストーリー
アフリカから南米までの人類拡散の道のり“グレートジャーニー”を逆ルートでたどった探検家・関野吉晴は、教授を務める武蔵野美術大学で一風変わった課外ゼミ活動をしている。通称“関野ゼミ”。手作りのカヌーでインドネシアから沖縄まで風任せの旅を敢行したり、船作りに必要な斧を砂鉄集めから始め、“たたら製鉄”の手法で作ったり、ユニークな取り組みは話題を呼んだ。そんな関野が2015年に始めたのが、“カレーライスを一から作ってみる”という試み。野菜や米、肉、スパイスなどの材料をすべて一から育てるというこの途方もない計画に、学生たちと取り組んだ。“モノの原点がどうなっているかを探していくと社会が見えてくる。学生たちにはカレー作りを通して色々なことに気づいてもらいたい。” それが、関野の狙いだった。集まった数十人の学生たちは、知らないことや慣れないことばかりの現実に悪戦苦闘しながらも、野菜や米、家畜を一から育てていく。思ったよりも生育が遅い野菜を見て“化学肥料を使ってもいいのではないか”、“いや、使うべきではない”と意見が分かれたり、一所懸命育てるうちに鶏に愛着が沸き、“殺すのを止めよう”、“いや最初から食べるために飼ったのだから屠るべきだ”と議論が巻き起こったり……。種植えからカレーライスが出来上がるまでの9か月間の記録を通して、“命を食べて生きる”という、人間にとってごく当たり前で、基本的な営みを見つめ直してゆく。
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