トト
Totonel
ルーマニアのロマ・コミュニティで、貧困、暴力、ドラッグなどの問題を抱えながら生きる子供たちを追ったドキュメンタリー。10歳のトトは母親が麻薬売買で服役し、ふたりの姉とアパートで暮らしている。夜になるとその家に男たちが集まり、ドラッグを打つ。ルーマニア・アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー映画賞、ブダペスト国際ドキュメンタリー映画祭作品賞他、受賞多数。
ルーマニアの首都ブカレスト郊外にある小さなワンルームの部屋で、10歳のトトとふたりの姉たちは暮らしている。ソファーベッドが一つと少しの棚があるだけで、水道もコンロもない。夜になるとその家に男たちが集まって来て、慣れた手つきでそれぞれ腕や手に注射器を刺す。17歳の長女アナは彼らを追い出そうとするが意味はない。姉弟はドラッグを打つ男たちの隙間に潜り込むようにして眠る。トトたちの母ペトラは麻薬取引の罪で禁固7年となり、タルグショル刑務所にいる。父親は顔もわからない。15歳の次女アンドレアはいつもイライラしていてアナとすぐ言い合いになり、友達の家を泊まり歩いている。映画のために監督から預かったハンディカムで自分の生活を記録しており、友達と一緒に音楽を聞いたり、ヘアスタイルで遊んだり、普通の女の子と同じようにしている。アンドレアが友達の家に泊まっている間にブカレスト麻薬捜査部隊が家に突入してきて、アナは逮捕される。トトとアンドレアが参加している児童クラブでのダンスの課外授業で、ダンスチームのデモンストレーションを見るトトの手は、次第に音楽に合わせてひらひらと波打ち始める。トトは見よう見まねに全身で踊り出す。出所したアナはクスリはやめると誓うが、思い通りにいかない生活から逃げるように、またドラッグに手を出してしまう。アンドレアは、ひとりの部屋でカメラに向かって心の内を吐き出す。悩みを誰かに聞いてもらうとそれだけで少し楽になれること、アナと施設にいたとき、親に捨てられたと傷ついたこと。アンドレアは、トトと一緒に孤児院に入ろうと決める。すっかりダンスに夢中になったトトは、通りを歩いていてもレッスン中も体がひとりでに動き出す。そして、トトが目指す国際ヒップホップ大会の当日がやってきた。