日本統治下の台湾において、日本語で新しい台湾文学を作ろうとした詩人たちのドキュメンタリー。1930年代、西洋モダニズム文学の波に衝撃を受けた若き台湾詩人たちは、母国語ではない日本語で詩作することへ葛藤しながらも、同人雑誌『風車』を創刊する。監督は、本作が初の長編作品となる黄亞歴(ホアン・ヤーリー)。第53回金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞、2016年台北映画賞最優秀脚本賞・最優秀音響設計賞、第10回台北国際ドキュメンタリー映画祭台湾コンペティション部門グランプリ受賞。
ストーリー
1930年代の台湾は日本による植民地支配が40年近く経過し、安定した同化の段階に入っていた。このころ、モダニズム詩人の団体としては最も早い風車詩社が登場する。日本の文学者たちとの交流や、留学先の日本で最先端の文化や芸術に触れるなかで、台湾の若き詩人たちに大きな衝撃をもたらしたのは西洋モダニズム文学の波だった。彼らはマルセル・プルースト、ジャン・コクトーなど、西洋モダニズム文学に対し大きな憧れを抱き、仕事が休みの日曜日になると、古都・台南を散歩しながらシュルレアリスム詩について語り合った。母国語ではない日本語で詩作することへの葛藤と哀しみを抱きながらも、自分たちの台湾文学を築くため、同人雑誌『風車』を創刊する。しかし、プロレタリア文学が主流を占める植民地支配下の台湾では彼らのシュルレアリスム詩は理解されず、風車詩社は1年半でその活動に終止符を打つ。1937年、盧溝橋事件をきっかけに日中戦争が勃発、日本の敗戦を経て、蒋介石の中国国民党による独裁時代が始まる。1947年、二二八事件で風車詩社の主要メンバーであった楊熾昌と張良典が無実の罪で入獄させられる。1952年には白色テロで、李張瑞が銃殺される。日本語で自分たちの新しい台湾文学を築こうとしたシュルレアリスム詩人たちの葛藤と、その時代の日本人文学者たちとの交流、そして西洋モダニズム文学のもたらした衝撃を、貴重な資料映像と彼らの詩で描き出す。