監督
新鋭・青柳拓監督が自身の故郷である山梨県・市川大門を舞台に撮り上げたドキュメンタリー。シャッターが目立つ商店街を、毎日ヘルメット姿で歩き回る不思議なおじさん“ひいくん”を追いかけながら、若者たちが流出し続けるふるさとの変化と現実を見つめる。
ストーリー
山梨県甲府盆地の南・市川大門。平安後期から「手すき和紙」が地場産業として定着、今も「市川和紙」として日本の障子紙の4割を生産している。また、「神明の花火大会」は、武田信玄の時代の狼煙が起源とされ、江戸時代には日本三大花火に数えられたという。そんな和紙と花火の街を、ヘルメット姿の少年のような風変わりなおじさんがひょこたんと歩いている。彼は、障がい者の自立施設「地域活動支援センター」に通う渡井秀彦さん。街の人々から“ひいくん”と呼ばれ、温かく受け入れられている。厚労省が提唱し、バリアフリーや障がい者の自立や社会参加を促す“ノーマライゼーション”の理念が、この地に根付いているである。だが、いつしかこの街はシャッターが目立つようになった。電気屋「水口屋テレビ」の店主・青柳正輝さんは病気で倒れ、店を閉めた。写真好きの正輝さんが撮影した膨大な数の写真には、街の活気ある姿が確かな形で写っている。華やかだった街の風景、盛り上がる祭り……。今、街はゆるやかに静まっていくが、街の人気者“ひいくん”は今日も朗らかに歩き続けるのだった……。