デイヴィッド・マッカラム
Hillel
他人の脳から抽出した液体を自分の体内に注入し、その脳の持ち主の記憶をたどり、二重、三重のスパイ活動を展開する。製作はジャック・レアード、監督はボリス・シーガル、脚本はエイドリアン・スパイズ、原作はカート・シオドマク、撮影はペトラス・シュロンプ、音楽はビル・バイヤーズが各々担当。出演はデイヴィッド・マッカラム、スーザン・ストラスバーグ、ヘルムート・カートナー、ロバート・ウェバー、ハーバート・フライシュマン、リリー・パルマーなど。
アメリカのノーベル賞受賞者エルンスト・クレイマー博士(ヘルムート・カートナー)は生物学の世界的権威者で、今は後輩の化学者ヒレル・モンドロー(デイヴィッド・マッカラム)や、助手のカレン(スーザン・ストラスバーグ)と共に、1人の人間の脳から抽出した液体“RNA”を別な人間の体内に注入することにより、その人間の持ち主の記憶を伝達することができる、という驚くべき内容の実験を続けていた。そんな時、CIAのスローターとドーシー(ロバート・ウェバー)が、博士の元に瀕死の男を連れてきた。東からの亡命に失敗したドイツの科学者ハウザー博士で、絶命は時間の問題だった。危険を承知でハウザーの死と同時に、脳からRNAを抽出したものの、その液体を誰に注入するかが問題だった。ヒレルは、自分に注入しようとするクレイマー博士を説得して、ハウザーのRNAを自らの体に注射した。同時にヒレルを襲ったのは、激しいけいれんと一時的な精神錯乱だった。やがて彼の周囲は数十年前の外国の風景に変わり、しかも恐ろしい記憶が彼の脳裏にうずまき始めた。病院にかつぎ込まれ、正常に戻ったものの、1日のうち何時間かは彼の頭脳に他人の記憶が入り込んだ。そのたびに彼は自分と他人との間を往復した。次にヒレルが自分に戻った時、彼は飛行機の中にいた。ヒレルの脳裏にひらめいたぼんやりした数式を求めての無意識の行動だった。パスポートの行き先はコペンハーゲンとなっていた。しかも、機内で知りあったレナーという男(実はCIAのスパイ)と言葉を交した自分が、何の抵抗もなく“カール・へルムート・ハウザー”と名乗っているのだ。コペンハーゲンを経て、次の予定地ベルリンについたヒレルを待っていたのは、クレイマー博士とCIAのドーシー、それにレナーの3人だった。だが東側の二重スパイだったレナーがスキをつきドーシーを倒して、クレイマー博士とヒレルを東側に引き渡した。彼らはそこで2人の男と向かい合った。その1人はハウザーの記憶によれば憎むべき男だった……。それは戦時中、己を断種したナチの一員だったのだ。復讐の鬼と化したヒレルは男に拳銃をつきつけたが、油断したスキに逆に撃たれ、頭に数式の記憶を残したまま彼は命を断った。
Hillel
Karen
Kramer
Dorsey
Renner
Anna
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