ロバート・フォスター
Tonny
シネマ・ペリテ作家を志向する学生がテーマの作品。製作は「栄光への賭け」のレスター・リンスク、監督は「かわいい毒草」のノエル・ブラック、脚本ジョージ・ウェルズ、撮影を「幸せはパリで」のミシェル・ユーゴー、音楽は「くちづけ」のフレッド・カーリンなど。主演は「アメリカを斬る」のロバート・フォスター、「愛すれど心さびしく」のソンドラ・ロック、TV出身のスザンヌ・ベントン、その他ロバート・S・フィールズ、フロイド・マトラックスなど。デラックスカラー、スタンダード。1970年作品。
ある大学の映画研究所員トニー(ロバート・フォスター)は、理想化された恋愛と世俗的肉欲を融和させようと試みる疎外芸術家をテーマとする抽象的作品を作り、作品賞を受けた。が、その第一作は彼の創作欲を満たすものではなかった。彼は唯一の映画作りとは、真実に基盤をおき、素人俳優が演じるべきだと考え、ロサンゼルスを歩き廻り、浮浪者、娼婦、悲劇の犠牲者、自殺者などを撮りまくった。だが、その「人生の出来事」を撮るだけでは彼は満足せず、友人たちの私生活と、自分の撮った記録映画とをミックスした作品を作ることにした。彼のガール・フレンドのメリス(ソンドラ・ロック)、シビル(スザンヌ・ベントン)、ホモの友人ロニー(フロイド・マトラックス)を主人公にしたいろいろな暗示や作為を織り込んだものだった。脚本ができると、トニーは主任教授エイムス(ロバート・S・フィールズ)に撮影許可を受けにいったが、教授は映画の「真実性」を危うくすると言い、拒絶した。それというのも、トニーの撮ったフィルムに男女が車の中で性行為をしているシーンを見つけ、また、それは2人の同意を得たものでないということが歴然としていて、トニーの常識性を疑っていたためだった。だが、トニーは教授の注意にも耳をかさず、ロニーとメリスのセックス・シーンを撮ると言いだした。こうした経験をするとロニーのホモは治るし、メリスも性的にも精神的にも解放されるというのだ。メリスが拒絶すると、トニーはシビルに相手役を命じた。それを知ったメリスは教授にトニーの計画を知らせ、教授は撮影を中止させた。その後、あるメージャー会社が商業映画を作る話を持ち込んできた。だが、勿論トニーの条件、主張が受け入れられるわけはなく、破談した。職業映画人になれるチャンスを失い、友や恋人も失った彼は、うつろな心を抱えて渚に向かってひた走るのであった。(20世紀フォックス配給*1時間31分)
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