アン・シェリダン
Bess_Ballott
緑深いアーカンソーの田園を背景にしたホーム・ドラマ。モンゴメリー・ピットマンのオリジナル・シナリオから「アリゾナの勇者」のR・G・スプリングスティーンが監督、「烙印なき男」のジャック・マータが撮影、「捜索者」のマックス・スタイナーが音楽を、それぞれ担当した。出演者は「賭博の町」以来のアン・シェリダン、「地獄の掟」のスティーヴ・コクラン、「誇り高き男」のウォルター・ブレナンの3人を中心に、「友情ある説得」の子役リチャード・アイアー、TVの人気少女スター、シェリー・ジャクソン、「法律なき町」のエドガー・ブキャナン、「七年目の浮気」のソニー・タフツなど。アメリカでは“ペアレンツ・マガジン”誌から1955-6年度最優秀作品として《家庭賞》を受賞した。
8年前、妻ベス(アン・シェリダン)と幼い女の子を残して家出したマット・バロット(スティーヴ・コクラン)は、放浪生活を清算し生まれ故郷アーカンソーの農場へ戻る。町の人々は彼の帰郷を喜ばないが、酒屋だけは昔のお得意が戻って来たとほくそ笑む。マットは8つになる息子エイブラハム(リチャード・アイアー)に会い、連れ立って家へ戻る。ベスは驚愕、11になっていた娘アニー(シェリー・ジャクソン)は見知らぬ男の姿に驚き逃げ出してしまう。彼女は口がきけないのだ。過去の汚名をそそぐためマットはベスの使用人として息子の部屋に寝起きしつつ、働きまくった。ベスが雇っている小作人ジェフ(ウォルター・ブレナン)ともすぐ仲よくなり、アニーやエイブラハムもなつきだした。彼は家の周囲に手を加え、8年前壊れたままになっていた旧式フォードを修理して、土曜の午後はベスや子供2人を乗せて町を走り回るのだった。アーカンソーのいいつたえ--次の春まで待とう--のとおり、楽観的なマットは、春になったらベスも許してくれると考えていた。これを見て失望したのは、かねてベスに目をつけていたやくざのルロイ(ソニー・タフツ)、事々にマットへ喧嘩を吹っかけるが、彼はジッと堪え忍ぶ。ベスが再び夫として迎えてくれたら、思い切りやっつけてやろう、というわけ。アニーが口の不自由になった原因は、赤ん坊の頃、マットの酔っぱらい運転で事故を起こし、そのショックで口が利けなくなったのだった。マットは良心の苛責に耐えかねて家出し、以後8年、ベスは苦難をなめ続けてきたのだ。だがアニーと抱き合うマットの姿には折角の決意もぐらついてくる。やがて竜巻が来た。マットの冷静な判断で生命を救われた町の人々は、持ち寄った材木でマットの納屋を修理してくれた。ほどなく、ベスを連れて町に踊りに行ったマットは初めて1杯の酒を口にし、ルロイを散々にやっつけた。町の人は皆マットに味方したが、ベスだけは昔と変わらぬ夫の姿に悲しんだ。翌朝、子犬を探しに行ったアニーがいなくなった。ジェフの所にいたマットはベスの知らせで捜索隊の先に立ち、断崖の途中の木の根につかまっていたアニーを、身の危険も顧みず救い上げた。ほっとした一同は、アニーの声が出るようになったのに気づいた。ベスの肩を抱きつつ家路に就いたマットは、次の春まで待つ必要がないことを知った。
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[c]キネマ旬報社