ピーター・フォンダ
Evan_Bonner
モロッコのエキゾチックな風景の中で出会った男と女の真実の愛の姿を描く。製作・監督は「アンドロメダ…」のロバート・ワイズ。脚本はリチャード・デ・ロイ、撮影は「太陽がいっぱい」のアンリ・ドカエ、ニューヨーク部分の撮影をジェラルド・ハーシュフェルド、音楽はデイヴィット・シャイアー、編集はウィリアム・レイノルズが各々担当。出演はピーター・フォンダ、ファッション・モデル出身の新人リンゼイ・ワグナー、エステル・パーソンズ、アラン・ファッジ、フィリップ・マーチ、ジョフリー・ホーンなど。
モロッコのマラケッシュ。アメリカの大使館員のフィッツジェラルド(アラン・ファッジ)はエバン・ボナー(ピーター・フォンダ)を夕食に誘った。その夜、2人はアラビア風のレストランでおち合った。フィッツジェラルドは1等の切符をボナーに渡した。その時、3人連れの客が入ってきてフィッツジェラルドに挨拶した。彼はその中の若い女は有名なファッション・モデルだと教えてくれた。翌朝、ボナーがカサブランカ行きの列車に乗ると、昨晩のファッション・モデルと連れの中年の女に会った。彼女はディアドラ(リンゼイ・ワグナー)といい「ボーグ」誌の表紙にもなる売れっ子のモデルで、連れのバーバラ(エステル・パーソンズ)はファッション誌の編集者だった。列車が走り出すと、イライラとハンドバッグをひっかきまわしていたディアドラはマリファナのないことに気づき、ボナーのコンパートメントに向かった。彼女がドアを開けると窓外を見つめる彼の瞳に涙があふれており、思わず眼をふせた。しかし若い2人はすぐうちとけた。ディアドラは、昨夜の男とは同棲して子供まであったが別れたこと、ニューヨークには母と子供が待っていることなどを語ったが、ボナーはなぜか自分のことになると、固く口をつぐんだ。列車が故障でとまったとき、2人は丘の上にある遊牧民の市場へでかけた。深い空、さんさんとふりそそぐ陽光、草原を渡る乾いた風。2人の間に何かが起こりつつあった。赤い土の塀に囲まれた中庭で、ディアドラはそれを確かめようとする。だがボナーはそれを受け入れようとしない。彼女にふれれば離れたくなくなるからだという。思い出さえ彼は残したくなかったのだ。3人はカサブランカから飛行機でパリに向かった。その飛行機の中で、ボナーは初めて自分のことを語った。彼はベトナムの脱走兵で、地下組織を通じてバンコック、モスクワ、スェーデン、そしてモロッコへきたのだが、逃げ回ることに疲れ、異郷に身をおく生活から自分を取り戻したいこと、反戦のむなしさを語った。大使館へ自首し、アメリカへ送還される途中だ、終着駅には軍事裁判が待っている。「ゆきずりの2人ね」と平静をよそおったディアドラだったが、その心は思わぬほど強く揺れていた。明日の朝早く、ニューヨークへ立つというボナーに、ディアドラは、女の子でも引っかけてきたらと、モンパルナスのクラブを教えた。これ以上、2人が関わってもどうにもならないことを感じたからだった。パリには黄昏れがせまっていた。それはボナーに残された最後の夜だった。ボナーはパリの街を散歩し、ディアドラに教えられたクラブに入っていった。一方、ディアドラは、約束もせずボナーを別れた自分を責めた。もしかしたら・・・。彼女は自分がボナーに教えたクラブに向かってモンパルナスの石だたみを急いだ。2人は固く抱き合って再会を喜んだ。この上もなく美しいパリの夜だった。凱旋門からシテ島へ、2人は残された何時間かの生命を燃やす以外になかった。朝の薄明かりがカーテンを通して差し込んできた。ボナーは刑務所にはいる前にディアドラの家族に会いたいといった。ニューヨークのディアドラのアパートはセントラル・パークに面していた。子供のマーカスはボナーにすぐなつき、食事をすませた3人は公園へいった。3人は平和な親子のような束の間の幸福にひたった。やがて時間がきた。涙を浮かべてディアドラが「愛してるわ」といった。ボナーも別離の苦悩を隠すことができなかった。明るい陽射しの中で、それが2人の別れだった。
Evan_Bonner
Deirdre
Barbara
Fitzgerald
Gilles
Ron
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