監督、製作、撮影、編集
イスラエルとパレスチナを長年取材してきた土井敏邦が、ガザ激動の30年を記録したドキュメンタリー。パレスチナで暮らす一家を見つめた<第一部『ある家族の25年』>とハマスが民衆から乖離していった過程を追う<第二部『民衆とハマス』>の二部構成。2023年10月7日のハマスによる越境攻撃をきっかけに始まったイスラエルの攻撃で、すべてが破壊されたガザの厳しい現状を伝える。
ストーリー
<第一部『ある家族の25年』>故郷を追われ、ガザ最大の難民キャンプ“ジャバリア”で暮らすエルアクラ家。職につけず、結婚もままならない息子たちと、家族と故郷に戻る日を待ち続ける父。イスラエル軍の撤退、解放から、パレスチナ自治政府の誕生へ。人々が和平ムードに歓喜する中、父は“これは本当の和平ではない”と怒り、故郷への帰還を諦め、家の増築を始める。パレスチナ初の選挙が行われ、インフラが整備されたガザで、エルアクラ家の息子たちは仕事と家庭を持ち、新たな生活を始める。だが、自治政府の独裁・強権政治と腐敗が深刻化し……。1993年9月の“オスロ合意”直後から住み込みで取材を開始した土井敏邦が、25年をかけてエクアクラ家を見つめた本作は、ガザ住民にとっての“オスロ合意”の意味を問い、“ガザのパレスチナ人”と一括りにされる彼らが私たちと同じ人間であることを伝える。なお、エルアクラ家は、2023年10月からのイスラエルの軍事作戦により、消息不明となっている。<第二部『民衆とハマス』>イスラエル国家を認めず、全パレスチナの解放と難民帰還を掲げるハマスは、貧困家庭への食料配布や孤児救済、女性の職業訓練、医療支援といった慈善事業と武装闘争の両面で民衆の支持を拡げてきた。2006年の選挙と翌年の内戦の勝利でガザ地区を実効支配するようになると、イスラエルは封鎖政策を強化。そこにハマスの悪政も重なり、人々はかつてない貧困に喘ぐことに。絶望した住民の中には、イスラム教で禁止されている自殺に走る者やガザ脱出を図る者が続出。本作では、後にイスラエルに暗殺されたハマスの指導者やスタッフ、戦闘員、ガザ住民へのインタビューを重ね、ハマスが民衆から乖離していったプロセスを追い、現在の惨状の根源を浮き彫りにする。さらに、2023年10月からイスラエルによる攻撃を受け、すべてが破壊された現在のガザの厳しい現状を伝える。