米映画が批評サイトで0%の低評価となったのは黒人男性暴行死が原因?
映画批評を集積・集計するサイト「ロッテン・トマト」で、批評家たちは、Netflixオリジナル作品の映画『ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム』に対して、満場一致で”最悪な映画”との評価を下したと米「Variety」が報じている。6月5日に配信が開始された本作は、ロッテン・トマトが集計した批評家たちによる評価「Tomatometer(トマトメーター)」で、まれに見る0%という低スコアを叩き出している(6月12日現在)。
サイト内で掲載されている本作の31件のレビューはどれもポジティブな内容ではなく、レビュアー評価は10点満点中、平均2.24点だった。ロッテン・トマトでは映画レビューが集約され評価が下るため、対象の評論家全員が「悪い」とみなした映画の評価は0%とされる。そもそものレビュー数が少ない作品は0%になる可能性も高くなるが、少なくとも20件のレビューがあり0%を記録している作品は、本作を含めわずか40本程度しか存在しない。
なぜ『ラストデイズ・オブ・アメリカン・クライム』がこのような評価を受けているのか。それは、警察の残虐な行為や不当な暴力が描かれていることが要因の一つとなっているようだ。5月25日に米ミネソタ州で白人警官が黒人男性の首を圧迫死させた事件が起こり、これをきっかけとする抗議活動が米だけでなく世界中で起きている。その最中で配信が開始されたことが作品の評価をより低くしたとみられているのだ。「IndieWire」のデヴィッド・エーリッヒは「この映画は違法であるべき」と評しており、さらに「ローリング・ストーン」のデヴィッド・フィアーには「Netflixはいったい何を考えているんだ?」とまで言われてしまっている。
本作は、リーアム・ニーソン主演の「96時間」シリーズを手掛けたオリヴィエ・メガトンが監督を務め、2009年に出版された同名グラフィック・ノベルを基にしたアクション・スリラーだ。近未来のアメリカを舞台に、犯罪とテロを防ぐために脳のシナプスを操作して違法行為を阻止するという計画を政府が実行する前に、犯罪者たちが最後の大仕事に挑む…という物語が描かれる。
ただし、事件の影響を無視しても、何も言うことのないめちゃくちゃな作品だという意見もある。本作は米Netflixの映画トップ10リストで第2位と、いま最も人気のある映画の1つとなっているが、これは視聴者が、批評家たちの評価が正しいかチェックしているということでもあるだろう。「0%」という”最悪な映画”の評価が正当なものなのかどうか、実際に作品を観て確かめてみてほしい。
文/編集部