役所広司&深田晃司&是枝裕和が語る「映画祭の未来」第33回東京国際映画祭ラインナップが発表
10月31日(土)~11月9日(月)に開催される、第33回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が9月29日に六本木ヒルズアカデミーヒルズで開催され、「TOKYOプレミア2020」部門を始め、全上映作品が発表された。会見に出席した、本年度のフェスティバル・アンバサダーを務める役所広司は「例年は若くて美しい女優さんがやっていたのに、なんで俺なんだろうかと少し躊躇しましたが」と苦笑いを浮かべつつ、「映画界の活性化のために役に立つことがあればと思って、華やかな場所に立たさせていただいています」と力強く語った。
新型コロナウィルスの影響で世界中の映画祭の多くが中止や延期となっているなか、東京国際映画祭は、映画の未来への希望の光を灯すべく、映画館での上映を基本として感染対策をとりながら開催される。主な変更点としては、これまでにあった「コンペティション」、アジアの新鋭監督を集めた「アジアの未来」、日本映画の気鋭作品が揃う「日本映画スプラッシュ」の3部門を、新作のショーケース部門として「TOKYOプレミア2020」と題して一つに統合。日本、アジア、欧米といった地域バランスを保ちながら選定。107の国と地域から1356本がエントリーされ、そのなかから32本の作品が上映される。また様々な賞を競うのではなく、上映される全作品を対象に観客の投票によって決定する「観客賞」が設けられる。
会見には、「Japan Now」部門で特集される深田晃司監督、アジアのクリエイター達による新たなトークイベント「アジア交流ラウンジ」を検討会議メンバーと共に企画した是枝裕和監督、東京国際映画祭チェアマンの安藤裕康、東京国際映画祭フェスティバル・ディレクターの久松猛朗、「ジャパニーズアニメーション」部門プログラミング・アドバイザーの藤津亮太も出席した。
東京国際映画祭は「役者として育ててもらった映画祭」という役所は、「映画を通して、いろいろな人に勇気や力を与えるための映画祭。なんとか盛り上げていきたい」と決意のコメント。「僕は今年やろうとしていた作品はほとんど中断、延期になりました。その決断は大変だったと思いますが、正しかったと思う」と告白し、「いろいろなことが激変した時にこそ、これを乗り越えた時にすばらしい作品が生まれてくるもの。撮影現場もまだまだ苦労があるけれど、スタッフ、キャストたちは苦難を乗り越えて、力強く復活しようと頑張っている」と映画人としての想いを語った。
コロナ禍においてミニシアターを守るべく立ち上がったミニシアター・エイド基金の発起人でもある深田監督は「ミニシアターがなくなってほしくない、多様な映画がなくなってほしくないと願う映画ファンがこれだけいたんだということは、多くの映画人にとって力になった」と得たものも大きかったという。同じ想いを抱いたという是枝監督は「映画産業全体が迎えている危機的な状況は、コロナだけが原因ではない。そのことに気づくきっかけにもなった。映画業界全体が改革意識を持てるのか」と常に思案していると言い、今回の映画祭では「オンラインにはなってしまいましたが、ゲストを呼んで、映画の現在と未来についてトークをする交流ができる場としての映画祭を実現したい」と参加した理由を明かした。
また「コロナ禍を経て、映画祭の発展についてどのように考えているか」と記者から質問が上がると、役所は「大事なのは、やり続けていくこと。それこそが映画祭の役割」とキッパリ。深田監督は「みんなで集まれたらいいなとは思う。でもオンラインという形で行い、より多くの地域の人に映画祭を届けることは必ずしも悪いことではないと思った」、是枝監督は「映画祭、それぞれの個性を持つことが大事。東京国際映画祭に関しては、個人的にはコンペはないほうがいいと思っている。映画祭本来の目的を明確化する時に、コンペや賞を与えることが必要なのかということについても、立ち返ってみるべき」と持論を述べていた。
第33回東京国際映画祭は、10月31日~11月9日まで開催。六本木ヒルズやEX シアター六本木、東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場などで行われる。久松によると「レッドカーペット(イベント)は難しい。セレモニーのなかで、それに代わるような工夫をしていきたい」と語っていた。