串田壮史監督、台詞ではなく映像と効果音で語る『写真の女』をTIFFでアピール
第33回東京国際映画祭で「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」 SKIPシティアワード受賞作品『写真の女』(2021年初頭公開)が、11月6日にTOHOシネマズ六本木で上映され、主演の永井秀樹、大滝樹、串田壮史監督がQ&Aに登壇した。
本作は、女性恐怖症の写真レタッチャーである械(永井)が、体に傷がある女キョウコ(大滝)に頼まれ、 画像処理によって傷のない美しい姿を生み出していくという異色作。
ラストまで台詞を発しない械役を演じた永井は「僕は舞台中心で俳優をやっているんですが、正直に申しまして、台詞があまり得意じゃないんです。すぐかんだりしちゃうので、台詞がないことをまず喜びました」とユーモアを交えて挨拶したが、彼自身は劇団「青年団」に属する実力派の舞台俳優だ。
永井は械役について「そのぶん動きで表現しないといけないんですが、作り過ぎちゃうところがあるので、やりすぎないことを常に心掛けて演じました」と、語った。
チャップリンの無声映画を愛する串田監督は、本作について「言葉で説明しなくてもわかるように、映像と効果音でストーリーを語れるように注意しました」と解説。「永井さん、大滝さんを想像しながら脚本を書きましたが、バッチリとねらいどおりの表情を見せてくれました」と2人を賞賛した。
ハイヒールで踊るシーンも秀逸だった大滝は「バレエを3歳からやってまして、海外で6年くらい踊り、7年くらい前にプロのバレリーナは引退しました。でも、串田監督には、前作のショートフィルムの声でも、バレリーナ役で起用していただきましたし、今回も得意なことを上手く引き出していただけました」と串田監督に感謝する。監督も「大滝さんのプロフィールを見ながら脚本を書きましたから」と笑顔を見せた。
すでに60もの海外の映画祭で上映されたという本作だが、串田監督によると「映画祭でリアルに上映されたのは10回あるかないかです。でも、SKIPシティの場合は、オンラインでもチャット形式で質問が来たりしておもしろかったし、オンライン上映だと、自分も数多く作品を観れる点はいいなと思ったりもしました」とオンラインの良さについてもコメント。
さらに「大阪アジアン映画祭での上映は、フィジカルな上映でしたが、残念ながら登壇してのQ&Aなどはなかったです。僕自身は、フィジカルでもオンラインでも、お客さんの熱気が伝わると思っていますが、こういう(実際に登壇しての)Q&Aは初めてでした」と今回登壇できた喜びも口にした。
今年のTIFFは、映画の未来への希望の光を灯すべく、コロナ禍でも感染対策を取りながら、映画館での上映を基本としての開催に踏み切った。期間は10月31日~11月9日(月)で、六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズやEXシアター六本木、東京ミッドタウン日比谷、東京国際フォーラム、神楽座などで連日開催中。
取材・文/山崎伸子