綾野剛と北川景子が明かす、濃厚な信頼関係「北川さんに手綱を握ってもらっている」
中山七里のクライム・サスペンス小説を映画化した『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』(11月13日公開)で、綾野剛と北川景子が刑事役でバディを組んだ。『パンク侍、斬られて候』(18)に次いで、二度目の共演となった彼らが今回挑んだのは、「本人の意思と家族の同意のもと実行される安楽死は殺人と言えるのか?」との難題に葛藤する刑事。極めてハードな役柄となったが、綾野、北川共に「お互いの存在があれば、前に進めると思った」と告白。さらに綾野は「手綱を握ってもらっている」と笑うなど、お互いに感じている並々ならぬ信頼を明かした。
本作は、130人もの患者を安楽死させた実在の医師をモデルにした中山による小説の映画化。ある闇サイトで依頼を受け、安楽死という手口で殺人を繰り返す連続猟奇殺人犯“ドクター・デス”が現れ、警視庁捜査一課のナンバーワンコンビ、犬養隼人(綾野)と高千穂明日香(北川)らは捜査を開始。事件の解明を急ぐが、被害者遺族たちの証言は、どれも犯人を擁護するものばかり。捜査する側の正義は揺れ、犬養と高千穂も混乱していく。
「北川さんとの出会いは、僕にとって財産」(綾野)
安楽死という重厚なテーマに立ち向かうこととなった綾野と北川だが、オファーを受けた最大の決め手となったのは、バディを組む相手だったという。
綾野は「まずなによりも北川さんとまたタッグを組めるということが、うれしかった。前回、初めてご一緒させていただいて、彼女の聡明な姿を見て『また違う作品でぜひご一緒したい』と思っていた」という。
さらに「安楽死というテーマに挑むにあたって、脚本を読んだ時にも俳優が考えなければいけないことの多いホンだと思った」と難題へ挑む心境を吐露。「本作でバディ役として北川さんの名前が上がってきた時に、信頼する北川さんとならば立ち向かっていけると思った。気にかかっていた部分さえも、『北川さんならば、一緒に立ち向かっていける』と自信に変わった。そう思わせてくれる役者に出会えたことは、僕にとって財産です」と背中を押してくれたのは、北川の存在だった。
最大の賛辞に照れ笑いを見せた北川は、「私も同じです」とうなずく。「『パンク侍、斬られて候』を京都で撮影をしている時に、綾野さんと『またいつか、全然違ったタイプの作品を一緒にやってみたいね』と話していて。『シリアスな作品とかいいよね』とも話していたので、今回のお話をいただいてすぐに『やりたいです』とお返事したくらいで。デリケートなテーマに挑むことになるけれど、綾野さんとサスペンスに飛び込んだらどうなるんだろう、という期待感がありました」と吐露。
また「以前、中山七里先生の『ヒポクラテスの誓い』という作品の映像化に出演させていただいたことがあって。とてもおもしろい作品を書かれる先生で、先生ともまたご一緒したいと思っていました。さらに深川(栄洋)監督については、櫻井(翔)さんとご一緒した時に『すごくすてきな監督なんだよ』と聞いていて。本当にたくさんの縁が重なった作品で、断る理由なんてなかったんです」と話す。
「綾野さんは、とにかく熱い人」(北川)
2人とも、2003年にデビューした同期の間柄。以降、様々な作品で確かな存在感を発揮し、ひたむきに俳優道を邁進している。「どこか似ている」と共感を寄せる彼らは、「一緒にいると楽」と顔を見合わせて笑う。
北川は「前作も今回も、綾野さんが座長の現場に、私が入らせていただくという形なので、私は綾野さんについていくだけ」と語る。なぜそこまで信頼できるのか?すると北川は「綾野さんは、とにかく熱い人だから」とニッコリ。「クランクイン前に、監督やプロデューサーと2時間くらいかけて打ち合わせをしたんですが、綾野さんはずっとしゃべっている!」と明かすと、綾野も大爆笑。
北川は、こう続ける。「綾野さんの話を聞いていると、私も『そうだな』と思ったり、『そこまで深く台本を読めていなかったな』と思ったり、とても勉強になるんです。たまに、綾野さんのなかでやりたいことやビジョンがありながらも、『これでいいのかな?』と悩んでいる時があって。そういう時には『いいと思うよ』と言うと、また走り出す。熱く走っていく方なので、私は見守っている感じでした」。
綾野は「ちゃんと手綱を握ってもらっているんですよ」と楽しそうに微笑みつつ、北川について「どんなシーンでも、説得力を持たせることのできる人」と語る。「例えば接見室のシーンなど、ものすごくミニマムな世界を描く場面でも、北川さんが演じる高千穂がいれば、そこに説得力が出る。そこにいるだけで、すべてを成立させてしまうんです。
それはもちろん才能であり、センスもあるのかもしれません。でもそれ以上に、北川さんは圧倒的な鍛錬のもと、それを成し得ているんだと思うんです。若いころからテレビという場所で戦い続け、主役もやり続けている人だからこそ、できること。そこには、アスリートのような努力がある。アクションがある作品だったとしたら、いまの自分の力でできるアクションだとしても、もっと上を目指して練習をする」と惚れ惚れ。
「僕が編集マンだったとして、『このシーンどうしたらいいんだろう』と悩んだら、北川さんを入れておこうと思うかも」と話すと、北川は「あはは!」と破顔。綾野は「“見られる”ということに対して、逃げずに、きちんと向き合ってきた方。だからこそ、説得力があるんです」と力を込める。