末期がんと闘いながら生み出した映画…あなたは何を感じるだろうか?
田中冬星という俳優をご存じだろうか。アンダーグラウンド演劇の世界で長く活躍し、映画、ドラマで個性的な役柄を演じるだけでなく、最近では独特のハスキーボイスでテレビのCMのナレーションや声優としても活躍している人物だ。
彼は2008年春、念願の映画製作を行うために、映画製作会社「銀影社」を設立。ところが、海外との合作映画の話も進んでいた矢先の11月、末期がんに冒されていることが発覚してしまう。手術により一命は取り留めたものの、余命宣告を受けた彼が、抗がん剤の副作用と闘いながら製作した2本の映画、それが11月7日(土)公開の『ルナの子供』と『夜の影』。
『ルナの子供』は田中が製作総指揮を務めた、子供が生まれない愛の形を描いた3話からなるオムニバス。その中でも、末期がん発覚直後に急きょ撮影された第1話「彼女の物語」で自らの病状をカメラの前にさらす彼の姿は壮絶な迫力だ。
一方の『夜の影』は田中自身が監督し、病身ながら北海道ロケを敢行した渾身の作品。麻薬の売買を取り仕切るボスに薬物の売人を強要されている女が、田中演じる血まみれの男と出会うことから始まる物語。死を前提にした人間が描き出す、一見醜く、孤独と絶望、悲鳴に満ちた世界。だが、その中から本当の美しい世界が見えてくる。
絶望と闘いながら、命をかけて生み出した映画たちを観て、あなたは何を感じるだろうか。【トライワークス】
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