オスカー最有力と呼び声高い『ノマドランド』が北米公開!ニューヨークの映画館が約1年ぶりに再開へ
前週に引き続き、公開から13週目を迎えたドリームワークス製アニメ『The Croods: A New Age』が首位を獲得した先週末(2月19日から21日)の北米興収ランキング。北米での累計興収は5000万ドルを突破し、昨年春のコロナ禍以降に公開された作品としてはクリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』の5800万ドルに次ぐ第2位に。「Variety」では、このままのペースでいけばコロナ禍最大のヒット作として浮上する可能性を報じている。
そうしたなか、いまだ苦境がつづく北米の映画興行に希望の光ともいえる大ニュースが飛び込んできた。ニューヨーク州のクオモ知事が、3月5日(金)にもニューヨーク市内の映画館を制限付きで再開することを発表したのだ。現時点ではまだ主要都市の映画館は休業したままで、大手スタジオは春シーズンに公開を予定していた大作映画の公開延期を相次いで決定していたが、今回の発表で再検討される可能性も。流動的だった『ワイルド・スピード/ジェット・ブレイク』や『ブラック・ウィドウ』が予定通り公開されるとの期待も高まりをみせている。
また同時に注目が集まっているのは、映画館復活によるアカデミー賞への影響だ。この3月5日は、第93回アカデミー賞のノミネーション投票が始まる日でもある。相次ぐ公開延期の影響で通常よりも選考対象の間口を広げた今年のアカデミー賞は、Netflixをはじめとした配信公開作品の台頭が早くから噂されていた。しかしこのタイミングで映画館が復活するとなると、多くのアカデミー賞会員が映画館で対象作品を鑑賞することができ、「映画館で映画を観る」という体験の価値が再確認されることだろう。
ちょうど19日にはアカデミー賞で最有力と言われているクロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』(3月26日公開)が劇場公開を迎え、1175館で50万ドル強の興収を記録。前週に公開された『ミナリ』(3月19日公開)や『Judas and the Black Messiah』と同じく、配信と劇場の両方の選択肢が用意されているわけだが、映画館の営業再開は興行面だけでなく、これらの作品の賞レースへの勢いをより高める追い風となることだろう。ここにきて、ニューノーマル元年と言われていたアカデミー賞の風向きが大きく変わることになりそうだ。
文/久保田 和馬