本年度ゴールデン・グローブ賞2冠の『ノマドランド』、『唐人街探案3』など特大ヒットが続く中国で4月23日から劇場公開も
現地時間2月28日に行われた第78回ゴールデン・グローブ賞で、映画ドラマ部門作品と監督賞に輝いた『ノマドランド』(3月26日公開)が、4月23日から中国国内の映画館で公開されると「Variety」などが報じている。本作を手掛けたクロエ・ジャオ監督は中国の北京出身、10代で英国へ留学、高校からはアメリカに渡り、ニューヨーク大学の映画コースを卒業している。いわば中国出身でアメリカの教育を受けた“ハイブリッド監督”のオスカー候補作品が、北米時間の4月25日に行われるアカデミー賞授賞式の2日前から中国でも大々的に公開されることになる。
2月中旬の春節(旧正月)の中国における映画劇場興行収入は、日本でロケが行われた「僕はチャイナタウンの名探偵」シリーズ第3弾『唐人街探案3』や泣けるコメディという触れ込みの『Hi,Mom』が、2020年度の興行収入世界一だった中国映画の『八佰』の約4億6000万ドル(約486億円)を上回る特大ヒットとなっている。現時点で『Hi,Mom』が6億2400万ドル(約657億円)、『唐人街探案3』が6億2000万ドル(約654億円)と、桁違いの興行収入を記録している。中国でも注目度の高いジャオ監督のオスカー候補作の劇場公開にも、大きな結果が期待できる。
アメリカでは、2月22日にニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事が約1年間にわたり閉鎖されていたニューヨーク市内の映画館の営業を再開すると発表。3月5日より25%の収容率もしくは1スクリーンあたり50名以下の制限つきで営業が再開される。3月5日公開の『ラーヤと龍の王国』、前週の2月26日に北米公開の『トムとジェリー』(3月19日日本公開)の実写・アニメハイブリッド版などが多くの観客を集めると予想されている。
また、3月5日よりアカデミー賞のノミネーション投票が開始されるため、候補作はこの日に向けてより細分化されたカテゴリーに向けたキャンペーンを始める。ロサンゼルスに次いで多くのアカデミー会員の人口が多いニューヨーク市の劇場再開は、候補作にとっても追い風となる。
作品賞、監督賞、主演女優賞、撮影賞などの下馬評が高い『ノマドランド』は、北米では2月19日より劇場とディズニー傘下のストリーミング・サービスHuluにて配信が開始されている。だが、ジャオ監督とパートーナーの撮影監督ジョシュア・ジェームズ・リチャーズが写すアメリカの大自然の風景は、ぜひともスクリーンで観たい作品だ。現在、アメリカの劇場は約38%が30%〜50%の収容率で営業中、3月5日からの大都市での劇場再開によって北米での興行も活性化すると見られる。
文/平井 伊都子