『映画大好きポンポさん』平尾隆之監督が明かす主人公への共感、「幸福は創造の敵か?」への答え

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『映画大好きポンポさん』平尾隆之監督が明かす主人公への共感、「幸福は創造の敵か?」への答え

杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックをアニメーション映画化した『映画大好きポンポさん』(公開中)のスタッフ登壇舞台挨拶が6月12日にEJアニメシアター新宿で開催され、監督・脚本を務めた平尾隆之と、制作プロデューサーの松尾亮一郎が登壇。平尾監督が主人公ジーンへの共感を明かした。

本作の主人公となるのは、敏腕映画プロデューサー、ポンポさんのもとで製作アシスタントをしている青年ジーン(清水尋也)。映画を撮ることに憧れつつも、自分には無理だと卑屈になっていたジーンが、ポンポさん(小原好美)に才能を見いだされ、映画監督に大抜てき。新人女優のナタリー(大谷凜香)をヒロインに迎えて、映画撮影に挑む姿を描く。

監督&プロデューサーが登壇する舞台挨拶となったこの日。松尾プロデューサーは「平尾監督は、ジーンくんそのもの」とコメント。「いい作品を作る監督さんが、だいたい持ち合わせている狂気。ものづくりをするときの鋼の心(がある)。『こうするんだ』という揺るがないところがある」と語る。平尾監督は「松尾さんは『この世界の片隅に』で片渕(須直)監督ともお仕事されていますもんね」とこだわりの人として知られる監督の名前をあげ、これには松尾プロデューサーも大笑い。「諦めない男たちですよね」と称えていた。


【写真を見る】ディレクターズチェアに座る『映画大好きポンポさん』平尾隆之監督
【写真を見る】ディレクターズチェアに座る『映画大好きポンポさん』平尾隆之監督

一方「もしポンポさんが自分のプロデューサーだったら?」と聞かれた平尾監督は、「怖い」と告白。「常に試されている気がする。これは実は、杉谷さんも感じていた」と原作者とポンポさんを重ねた。「『お任せします』と言っていただいたのはありがたいんですが、『これは試されているのかな』という部分もあった。映画を観ていただいてツイッターで感想を言っていただいた時は、本当にうれしかった。肩の荷が少しだけ降りた気がします」と明かしつつ、「でもそういったプレッシャーのなかで、どれだけ期待に応えられるのか。ポンポさんを驚かせるものを作れるのかというところは、挑戦しがいのあるところ」と話していた。

主人公ジーンは、映画を作るために、なにかを“切ったり”する局面を迎え、自分の人生さえも犠牲にしていく。平尾監督は「僕自身、ものすごく面倒くさい人間」と吐露。「ものを作っていると、集団作業において、作業していただいたものをゼロにしなければいけなかったり、直したりもする。『ついていけない』と僕から離れていく人もたくさんいました」と振り返り、「作品が一番いい結果を残せればいいと考えた時に、それは受け入れなければいけない。そういったことの連続。それでもついてきてくれた人は、大事にしなければ」とものづくりに打ち込むことは、苦しみも伴うものだという。

さらに平尾監督は「子どものころは人とうまくしゃべれなくて、からかわれていた。その時に助けてくれたのが、映画やアニメーションや漫画」だったそうで、「その恩返しというか、自分が救われたように、自分が作る側になって、誰かの背中を押せたらいいなと思う。映画などに救われた経験がある点は、ジーンくんと同じ」とジーンとの共通点が多い様子。松尾プロデューサーも「ジーンくんに感情移入した」と語っていた。

ポンポさんが「幸福は創造の敵」とジーンに語りかけるひと幕もある。「幸福は創造の敵だと思いますか?」と尋ねられた平尾監督は、「僕個人としては、いま幸せな人が、幸せな映画を作れるどうかは限らないと思っている」と回答。「不幸せだと思っているからこそ、希望があったり、幸せな物語への想像力が強いと思う。そういう時に幸せな映画を作ったら、現実を飛び越えて、幸せな作品が作れるのではないか。逆に、幸福な人が絶望の話を描くこともできる。いま自分に足りないもの、渇望しているものを描く方が、映画に感情が乗っていくのではないか」と思いを巡らせていた。

取材・文/成田おり枝


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