「妖怪・特撮映画祭」で特撮講座が開催!『首都消失』や「平成ガメラ」シリーズの舞台裏とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「妖怪・特撮映画祭」で特撮講座が開催!『首都消失』や「平成ガメラ」シリーズの舞台裏とは?

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「妖怪・特撮映画祭」で特撮講座が開催!『首都消失』や「平成ガメラ」シリーズの舞台裏とは?

映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(8月13日公開)に先駆け、角川シネマ有楽町、ところざわサクラタウン・ジャパンパビリオン ホールBで「妖怪・特撮映画祭」が開催中だ。これを記念し、現場の第一線で活躍中の特撮スタッフを招いたトークイベント「特撮講座」が週替りで行われている。8月5日に角川シネマ有楽町で行われた「特撮講座」第2弾では、『ガメラ対大悪獣ギロン』(69)の上映後、『首都消失』(87)で特殊美術の助手を務め、特技監督・特撮デザイナーとして、「平成ガメラ」三部作、『ウルトラマンサーガ』(12)、『Fukushima 50』(20)など多数の作品を手掛けた三池敏夫が登壇した。

「妖怪・特撮映画祭」の「特撮講座」イベントに登壇した特技監督・特撮デザイナーの三池敏夫
「妖怪・特撮映画祭」の「特撮講座」イベントに登壇した特技監督・特撮デザイナーの三池敏夫

『ガメラ対大悪獣ギロン』は、宇宙船に乗り込んだ少年2人が、太陽を挟んで地球の反対側に位置する第10惑星テラに到着、少年たちを救うためガメラが地球の外に飛びだし、宇宙人の操る怪獣ギロンと対決する「昭和ガメラ」シリーズの第5作。

本作の感想を聞かれた三池は「僕はギロン世代なので、公開当時も観ていました。ギロンの良いところは描きやすい。子どもでも描ける、わかりやすいデザインが最高ですよね」と語った。

4Kで上映される1968年製作の『妖怪大戦争』
4Kで上映される1968年製作の『妖怪大戦争』[c]KADOKAWA1968

いまの職業を目指したきっかけについて「僕らの世代は特撮ブーム世代。1966年に『ウルトラQ』から空想特撮シリーズが始まり、『マグマ大使』や『サンダーバード』が放送され、映画では『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』や『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』などが上映された。映画とテレビで同時にいろんな作品が入ってきて、怪獣ブームを体験したから」と語った。

映画祭上映作品のなかから「大魔神」三部作をお気に入りとして挙げた理由について、「大学生の時、福岡の上映会にてフィルムで観ました。大映京都のスタジオは広くて高さもあるので、『大魔神』のクオリティは高い。時代劇を作る長年蓄積された技術力があり、ミニチュアや瓦も1枚1枚が、本物の2.5分の1サイズで、スケールが大きい。撮影所のスタッフ総出で作り上げていた。東宝の『ゴジラ』シリーズに匹敵する特撮技術だと思う」と称える。

それに対し、「昭和ガメラ」シリーズは「大魔神やゴジラよりも格下感は拭えないが、ガメラはほのぼのとしていて、ツッコミどころ満載なところが楽しい。ギャオスの断面はあれでよいのかと思ったけど(笑)」とツッコミを入れて笑いを取る。

また、いままでのキャリアを振り返り「省略が上手い大澤(哲三)さん、こだわりが強い井上(泰幸)さん、師匠2人の良いところを学んで取り入れた。『首都消失』の特撮は、東宝の中野組(中野昭慶監督)が担当したが、井上氏の下で特殊美術助手を務めた。毎日毎日、綿で謎の雲を作っていた。1984年、復活ゴジラの年に上京したが、幸いにも各社が特撮に取り組む機運があったので、東映、東宝、大映、円谷プロ、各社でいろんな仕事をさせていただいた。美術部は指南書やデータを誰も残していなかったので、先輩の仕事を見て盗むしかなかった。失敗の経験値から勉強した」と語った。

デザインの仕事については、「美術の仕事は、台本の文字でしか書かれていない情報を具体的な被写体にすること。それは、特撮パートだけでなく、本編の美術でも同じ。特撮はミニチュアを作るという作業が基本で、CGがなかった時代は、撮影するものは全て、ミニチュアセットを作らなければならなかった。当然関係してくるスケジュールや予算を管理するのも仕事だった」という。

自身が手掛けた「平成ガメラ」三部作については「ゴジラに負けないようなクオリティを」という熱い想いで挑んだそうだ。「東宝の怪獣は怖いけど、ガメラは子どもや人類の味方というイメージが原体験としてあった。重要なのは、どのくらいの縮尺にするか。大きく作るほど、美術も質感がリアルに近づくし、撮影もフォーカスが合いやすく、ミニチュアだとバレにくいというメリットがある。ただ、壊す役割の人が目的に応じて使えるかどうかにも関わってくるので、大きく作ることが必ずしもクオリティの保証になるわけではないですね」。

「実際、『平成ガメラ』1作目の『ガメラ 大怪獣空中決戦』で登場する東京タワーは、屋外の太陽光で撮れば本物に見える70分の1で作った。1番縮尺が大きい作品は『ガメラ3 邪神覚醒』で、ハチ公を2分の1で作った。『平成ガメラ』は準備期間を長く取っていただいたので、それが作品のクオリティに反映されているのは間違いない」。


【写真を見る】「妖怪・特撮映画祭」のポスタービジュアルには、大魔神や妖怪が勢ぞろい!
【写真を見る】「妖怪・特撮映画祭」のポスタービジュアルには、大魔神や妖怪が勢ぞろい!

「平成ガメラ」三部作では、アナログからデジタルへの移行を体験した。「1作目はCGカットが少なくて、回転ジェットと、ミサイルが飛ぶところと、オープニングで10カットぐらいしかなかった。技術的にできることが少なくて、1カットの予算も数百万と高かった。2作目、3作目とCGカットも増えていき、画作りのベースはミニチュアが基本だったが、3作目のガメラとイリスが空中で戦うシーンは、雲海がフルCGで、綿では到底再現できないと思った」。

それでも、アナログ特撮では、特別な想いがあると言う。「CGに移行しても、アナログでまだできることがあると思っていたところ、『巨神兵東京に現わる』で潤沢な予算と時間をいただいた。それまでは壊すビルを石膏で作るしか方法が無かったが、アナログの新しい方法で破壊を試したら、上手くいきました。CG全盛の時代に、ミニチュアを使って撮影する現場が本当に減り、いまは『ウルトラマン』シリーズや戦隊ヒーローシリーズぐらいしかないんです。最近の仕事はミニチュアの展示が多いのですが、特撮の礎を築いた円谷英二監督の生誕の地、福島県須賀川市に設立された『須賀川特撮アーカイブセンター』で、僕らが作ったジオラマセットを展示いただいています」。

なお、本イベントに続く「特撮講座」第3弾は、アニメ特撮アーカイブ機構・修復師の原口智生を迎え、8月12日(木)20:00~に角川シネマ有楽町で開催予定だ。

文/山崎伸子


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