高畑充希とタナダユキ監督が初タッグ!映画『浜の朝日の嘘つきどもと』はどのように生まれた?
『百万円と苦虫女』(08)や『ロマンスドール』(20)のタナダユキ監督が高畑充希と初タッグを組み、福島県南相馬市に実在する映画館「朝日座」を舞台にした『浜の朝日の嘘つきどもと』が9月10日(金)より公開される。このたび本作の制作秘話とメイキング写真を独占入手した。
本作は、東京の映画配給会社に勤めていた主人公が恩師との約束を果たすために“小さな嘘”をついて映画館を守ろうと奮闘する物語。100年近くの歴史を持つ福島、南相馬の映画館「朝日座」。ある日、茂木莉子(高畑)と名乗る女性が支配人の森田(柳家喬太郎)の前に現れる。経営が傾いた朝日座を立て直すという、高校時代の恩師、田中茉莉子(大久保佳代子)との約束のために東京からやってきたという莉子。すでに閉館が決まり打つ手がないと諦めていた森田だったが、見ず知らずの莉子の熱意に少しずつ心を動かされていくことに。
これまで不器用で魅力あふれる様々なキャラクターを描き、国内外で多くの賞を受賞してきたタナダ監督。本作の企画がスタートしたのは5年前。タナダ監督がメガホンをとった福島中央テレビ開局45周年ドラマ「タチアオイが咲く頃に〜会津の結婚〜」が日本民間放送連盟賞テレビドラマ番組部門で優秀賞を受賞し、その祝賀会の席でタナダ監督自ら「福島の人たちの温かさが大好きになった。またここで撮りたい」と話したことから。かくして福島中央テレビ開局50周年記念作品として、ドラマ版と映画版が制作されることに。
「震災から10年経ったが、風評被害をはじめまだいろんな被害がある。諦めなければいけないこともたくさんあるけれど、それでもこの街で生きていく」というテーマのもとに本作へ取り組んだ制作陣。さらに“映画監督”と言う目線から、昨今の困難な状況やいろいろな不安や怒り、映画を撮るなかでの喜びや苦しみなど、タナダ監督の想いも反映し「映画を愛し、映画に生きる人たち」を描こうと決まる。
主人公の莉子役を演じた高畑は「タナダ監督の作品が好きで、ずっとお会いしたかった。実際にお会いしたら人としてとても好きだと思いました。脚本に書かれたセリフも自分のなかで引っかかることがなく、キャラクターそれぞれが脚本から飛びだしてくるような印象でした」と、初タッグを組んだタナダ監督の印象を振り返る。
また、光石研は「一挙手一投足を観察し的確な指示をいただき、安心してやれました。なんともハンサムな監督です!」と語り、吉行和子も「タナダ監督の映画愛がぎっしり詰まっています。監督はとてもチャーミングでした」と、出演したキャスト陣はタナダ監督の熱量に心打たれた様子。
そうして完成したドラマ版「浜の朝日の嘘つきどもと」は、昨年10月末に福島中央テレビにて放送され、福島県内では世帯視聴率15.7%を記録。タイムシフトと合わせた総合視聴率は20.3%にのぼり、ローカルドラマでありながら異例の全国29の地域で放送され、第58回ギャラクシー賞テレビ部門“選奨”を受賞するなど大好評を博した。
映画版『浜の朝日の嘘つきどもと』で描かれるのは、ドラマ版の前日譚。ドラマ版とは異なる物語が展開するので、本作から観ても大丈夫。是非とも映画館で、タナダ監督の福島愛と映画愛、そして映画を愛する人々の物語を堪能してほしい。
文/久保田 和馬