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受賞者は商業映画監督デビュー!「日本ホラー映画大賞」プロデューサーが語る決意「デビューまでしっかりバックアップしていく」

インタビュー

受賞者は商業映画監督デビュー!「日本ホラー映画大賞」プロデューサーが語る決意「デビューまでしっかりバックアップしていく」

「リング」シリーズをはじめ、これまで数多くのホラー映画を世に送り出してきたKADOKAWAが主催し、大賞受賞者には商業映画での監督デビューが約束されるという、日本初のホラー専門フィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」。賞の企画者であり、数多くのホラー映画を手掛けるKADOKAWAの小林剛プロデューサーは、「海外ではアリ・アスターやジョーダン・ピールのような新しいことをやっているホラー作家が次々と出てきている。きっと日本にもそういう人たちがいるはず。表に出る機会がなく、海の向こうの動きにうずうずしている皆さんを、この賞を通して見つけ出したい」と、“令和の新しいホラー作家”発掘への強い意志を語りはじめる。

「一緒に新しいホラー映画を作りだしていきたい」

「日本には20年ほど前にJホラーのブームがありました。ですが、それがあまりにも大きなムーブメントになったせいで、いまだに日本のホラー映画はその方法論の影響から逃れられていません。自分もホラー映画のプロデュースをしていますが、監督の候補にあがる作り手がいつも一緒の顔ぶれになってしまうことを少々気がかりに思っていました」と現状のホラー映画界への懸念を示しつつ、「ホラーというジャンルに限定されていますが、作品の方向性は自由です。そこからなにが生まれるかはまだわからないですから、まず応募してもらって一緒に新しいホラー映画を作りだしていきたいと考えております」とアピールした。

すでに発表されている通り、賞の選考委員長を務めるのは「呪怨」シリーズや「恐怖の村」シリーズを手掛けるJホラーの第一人者、清水崇監督。「清水監督とは、実は一緒にお仕事をしたことはないのですが、過去にKADOKAWAの『富江』シリーズを手掛けられたり、映画美学校出身のほかの監督とお仕事をさせていただいたこともあり、以前からとても近しい存在に感じていました。最近では“スマホラー”をプロデュースされたりと、後進を育てていきたいという感覚を強く持っていらっしゃることを知っていたので、きっとこの企画にも賛同してもらえると思い、お願いしました」と依頼の経緯を明かす。

また、ほかに選考委員を務めるのは乃木坂46卒業後は女優として活躍する堀未央奈、映像クリエイターのFROGMAN、ロックバンドBase Ball Bearの小出祐介、映画ジャーナリストの宇野維正と多岐に渡る顔ぶれ。「あまり映画畑ばかりに固めたくなかったというのが大きな理由です」と明かす小林は、「いろいろなジャンル、メディアの方々で、なおかつホラーがお好きな方。いわゆる映画人の感覚から離れた人選にしたほうがおもしろく、かつ新しいものが生まれると思いました。幸いなことに、ホラーが好きでとても詳しい方が揃ったと感じております」と、バラエティ豊かな4人の選考委員へ期待感をのぞかせていた。

「総合的なバランス感が、怖さを演出するためには必要」

黒沢清、安里麻里、古澤健…ホラージャンルから羽ばたく監督に必要なものとは?
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1990年代から現在に至るまで、数多くのホラー映画のプロデュースを務めてきた小林。そのきっかけは、黒沢清監督作品をはじめとしたJホラーブーム黎明期の作品に宣伝として携わったことだという。「『CURE』で初めて宣伝プロデューサーを務め、当時はまだ『リング』の前でしたが、このジャンルは自分が思っていた以上に凄いものなのだと実感しました。黒沢監督と初めてお会いする前は、相米慎二監督の助監督をされたあと、『地獄の警備員』やあまりに衝撃的だった『復讐』2部作を撮られていてどんな方だろうと思っていましたが、実際に会うとものすごく紳士で丁寧な人。そんな人からあのような作品が出てくるのかとただただ驚かされました」と、いまや世界規模で活躍する巨匠監督に成長した黒沢監督のファーストインプレッションを回想。

その後も多くの若手監督を、ホラー映画というジャンルをスタートラインに世に送りだしてきた。その代表格となるのは、『Another アナザー』(12)を経て、『今日、恋をはじめます』(12)などのラブコメ映画へも進出した古澤健監督。そして『バイロケーション』(13)や『劇場版 零 ゼロ』(14)を手掛け、9月まで放送されていたテレビドラマ「ただ離婚していないだけ」が大きな反響を呼んだ安里麻里監督だ。

「古澤監督は監督と脚本を手掛けられた『オトシモノ』が、ホラー映画の定番を織り交ぜたウェルメイドな作品で非常に好きだったので、『Another アナザー』の監督をお願いしました。安里監督も、ずっと気になっている存在だったところに『ゴメンナサイ』を観て、この人と作ると確信を持ちました」と、それぞれに抜擢のきっかけとなるホラー作品があったことを明かす。

そして「たとえば安里監督はビジュアルセンスがズバ抜けている方で、アート映画に行ってしまう一歩手前でエンタメ作品に留まらせるコントロール力を持ち合わせている監督です。ホラー映画の脅かし方は、Jホラー以降どこか定番化しているので、それを基本としたうえで、さらに斬新なショットやカット割り、そしてやはり練られた物語が重要になっていく。そうした総合的なバランス感が、怖さに結びつくためには必要なのです」と、魅力的なホラー映画を作るためのヒントを教えてくれた。

「応募していただければ、私は1本残らず全部観ます」

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すでに10月1日から作品募集がスタートし、現在も続々と作品が集まりつつある。それでも小林は「アニメーション部門」への応募が、現状少ないことについて残念そうな表情を見せる。「アニメは作るのに時間がかかることもあって、賞の告知をすることが少し遅かったと反省しております。ですが、これだけのアニメ大国である日本でも、ホラーアニメというのは意外なほど少ないのが現状です。アニメだからこそ、実写にはできない表現がたくさんあると思うので、アニメで怖いものをすごく観たいという思いが強くあります」と、気鋭のホラーアニメ作家からの応募を心待ちにしている様子を見せた。

そして「どこから可能性が広がるかわからないので、まずは応募してほしいです。いまは誰もが気軽に映画を撮れる時代です。実写は3分から、アニメは30秒から応募できますので、長さにかかわらず応募していただければ、私は1本残らず隅から隅まで全部観ます」と決意のほどを語る。「我々プロデューサーは、作り手の皆さんに場を与える存在。私がプロデューサーをやっている限り、ここで賞を獲れるかにかかわらず、なにか引っかかるものがあればどこかで残るものだと思っていてほしいです。ご縁があれば商業デビューまでしっかりとバックアップしますし、付き合いも1本で終わることはない。末長く日本の映画業界を一緒に盛り上げていける出会いがあればと願っております」と、プロデューサーとしての熱い胸の内を明かしてくれた。

取材・文/久保田 和馬

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