犬山紙子、アレサ・フランクリンの人生と歌声に鳥肌!
映画『リスペクト』(11月5日公開)の公開記念トークショーが10月29日にスペースFS汐留で開催され、エッセイストの犬山紙子が出席。「観終わった後に、自分で自分のことをリスペクトしようと思える映画。鳥肌が立った」と映画の感想を熱っぽく語った。
本作は、ソウルの女王アレサ・フランクリンのキャリアを描く音楽エンタテインメント。生前のアレサ本人の指名により、『ドリームガールズ』(06)でオスカーを手にしたジェニファー・ハドソンがアレサ役を演じる。映画を観た犬山は「英語の歌詞だけれど、ダイレクトに身に染み渡ってくる歌声に圧倒された。なんて豪華な時間!」と興奮気味に感想を明かした。
少女のころから抜群の歌唱力で天才と称され、きらびやかなショービズ界の華となったアレサ。本作では、その裏で経験していた尊敬する父や愛する夫からの束縛や裏切りまでもが明らかとなる。印象的なシーンについて、犬山は「それまでは男性の後ろに立つような態度だった彼女が、“私がここの主役よ”と一気に歌声で示すシーン」をあげ、また夫に別れを告げる場面も心に残っているそうで「あそこで自立したのがわかった。彼女の“自立して生きていく”という決意を感じた」と語る。
アレサの歌声が心に響くのは「彼女の人生にその文脈があるから。人生の地続きから出てきた言葉があるから」と分析した犬山。
「アレサは、父親から所有物のように扱われてしまっていて、“女は言うことを聞くものだ”という目線で見られることが多々あった。その後は夫に暴力を振るわれてしまったり、辛い思いをたくさんした。何重にも(困難から)脱出しなければいけなかった」とアレサの困難に寄り添い、「だからこそ、(楽曲『シンク』で)『フリ〜ダム!』とアレサに歌われると、きれいごとではなくて本当に解放されたような気持ちになる」「映画のタイトルになっている『リスペクト』も刺さる。『ちょっとでいいの、私のことをリスペクトして』という気持ちは、誰にでもある。なにかの差別と戦っている人にとっては、お守りのような言葉」とアレサが自身の人生を重ねながら歌い上げることで、カタルシスにつながっていることをしみじみと話していた。
アレサの人生から浮かび上がるのは、自分を肯定して、自分を信じて生きていくことの大切さ。犬山は「悲しみのなかでよくここまで進んで来れたなと思うと、“歌うことが好き”という自分の聖域があったから」と思いをめぐらせ、「自分に自信を持って突き進むというのは、なかなか難しいこと。私もへこたれる時がたくさんある。でもへこたれそうになった時には、アレサを心に召喚して『アレサは、こんな時に前に進んでいたな』と思いたい。勇気をもらえる存在になる」とにっこり。
アレサ役のハドソンの歌声にも圧倒されたそうで、犬山は「ジェニファー・ハドソンが、アレサを心からリスペクトして、それを自分のなかに落とし込んだ。そこに彼女自身の技術が奇跡のように重なり合って、生まれた映画。すごい迫力」と惚れ惚れ。コロナ禍で格差が拡大していることに触れながら「パワーをもらえる映画はいまこそ必要。私自身、いまほしい養分だった」と熱弁し、「私には4歳の娘がいるんですが、彼女とも一緒に(アレサの歌を)聴きたい。彼女にも、自分のことをちゃんと尊重できる人になってほしい。親子で聴きたい『リスペクト』」と笑顔を見せていた。
取材・文/成田おり枝