北野武監督「テレビは妥協なしで、映画は妥協だらけ」って!?

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北野武監督「テレビは妥協なしで、映画は妥協だらけ」って!?

東京フィルメックスの10周年記念イベントとして、北野武監督ら豪華ゲストを迎えたシンポジウムが11月21日に明治大学アカデミーホールで開催。3部構成の最初のマスタークラスで登壇した北野武が、映画監督や俳優、役者としてのスタンスについて、本音をたっぷりと語ってくれた。

「漫才やってる時は何やってもウケたので、自分のやるものは当たるなあと思ってて、それで映画を撮ってみたら全く相手にされなくて。テレビだと嫌なら現場に行かないし、妥協しないんです。でも、映画だと職人が多いから、カメラマンや照明さんも頑固だし、自分が思っていたことと違う現実があるから、どんどん妥協していく」。

これには、森プロデューサーも「私はむしろ逆で、テレビは妥協の産物で映画はそうじゃないと思ってました」と、驚いていた。北野監督はさらに「それで尚かつ当たらないんだと嫌になっちゃうから、だったら好きなことをやろうと。でも、テレビは観てる人はタダだから何をやってもいいが、映画は足を運んでお金を払って観てくれるから、あまり独りよがりなものを押し付けるのもなあと」。

さらに、今後の監督業、俳優業の今後の展望についてこう語った。「この先、監督&主演を務めるのは辛くなっていくのかなと。だから森繁(久彌)さんみたいに、ただ行けばお金がもらえるくらいの役者をやりたいなあ。監督&主演作は、あと何本できるかな。自分が主役をやるような深み(役者としての技量)がなくなってくる可能性もあるし、監督だけって方向には行かないと思う。役者なら、映画が失敗しても監督のせいにできるし、楽だから(笑)」。

いやいや、今、先のことを考えるのは早過ぎませんか? まだまだバリバリとアグレッシブにいってほしい。以前、北野監督は「自分は日本映画のウイルスみたいなもの。早く自分なんか、ぐちゃぐちゃにしてもらわないと日本映画はダメになる」と言っていたそうだが、その後もずっと精力的に監督作を発表してきた。「なんかオレって、なくなったと思ったら生きてる、一種の天然痘みたいなものかな。早く流行のA型インフルエンザになりたいよ(笑)」と北野監督。でも、これを聞いてちょっぴり安心。

北野節が炸裂し、終始笑いに包まれて大盛況だったシンポジウム。観客も映画愛にあふれたイベントに満足げな表情をしていたのがとても印象的だった。【Movie Walker/山崎伸子】

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