北野武監督、日本映画の歴史に残る偉大な3部作って!?
東京フィルメックスの10周年を記念して、北野武監督ら豪華ゲストを迎えたシンポジウムが11月21日に明治大学アカデミーホールで開催。3部構成のイベントの最初のマスタークラスで、北野監督がこれまでの映画作りを、ブラックなジョークや爆弾発言を交えてたっぷりと語った。
壇上には上がったのは、北野監督、森昌行プロデューサー、聞き手である映画評論家の山根貞男氏。「これまでの監督作で、いちばん上手くいったと思える作品は?」と聞かれると、北野監督は『ソナチネ』(93)だと答えた。
「『ソナチネ』は最後の監督作にしようと思って、沖縄で撮影して画もきれいな映画になったと思ったのに、いちばん評判が悪くて。じゃあダメならダメで、お笑いという原点をやろうと思って『みんな〜やってるか!』(95)を撮ったら、もっとダメで(笑)。この映画と、『シベリア超特急』(96)、『北京原人 Who are you?』(97)の3部作は、日本映画の歴史に残る“偉大な作品”だと思う」と、自虐ネタを飛ばす北野監督。
『みんな〜やってるか!』は「ビートたけし」名義で監督したハッチャケコメディーだ。『シベリア超特急』は映画評論家・水野晴郎監督作、『北京原人 Who are you?』は『男たちの大和 YAMATO』(05)などのベテラン、佐藤純彌監督作だが、この2本は図らずもキワモノ映画!?としてその名を轟かせていて、もはや“カルト映画”の域まで行った感がある……。
興行的に成功したのは、28億5000万円という興行収入を上げた『座頭市』(03)だ。金髪でタップを踏む斬新な座頭市が当時話題になったが、北野は「あの時は、『座頭市』のパロディーをやりたくてしょうがなかった。斎藤(恒久プロデューサー)から頼まれて撮ったんだけど、台本を渡した時、気絶してましたよ(笑)」と当時を振り返った。
また、編集に重きを置くという北野監督。「理工系の頭なのか、編集やってると因数分解とかしちゃうし、ひねりすぎて計算間違いも起こったりするね。台本どおりじゃない場合が多いんだ。タイヤが4本必要な場合、3本しかなくてしょうがないからハンドルをもってきたりもする。そういうことを平気でしちゃうよ」。でも、山根氏は、北野作品の面白さはそういう点にあると熱弁していた。確かに、予定調和な映画ではなく、突拍子もない要素が入る点が北野映画の面白さかもしれない。
現在は、ヤクザ映画を製作中だ。「疲れてまたヤクザ映画に戻ったんだ。そしたら面白くてしょうがない。これは俺のサイクルかもしれないね」。 タイトルはまだ未発表だが、今度はどんなヤクザ映画を見せてくれるのか? 今から首を長くして待ちたい。【Movie Walker/山崎伸子】