『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が6度目の北米No.1!オスカーノミネート発表に向け有力作が動きだす
アメリカ北東部が記録的な爆弾低気圧に見舞われた先週末(1月28日から30日)の北米興収ランキング。一部の映画館が悪天候により休業したこととオミクロン株の急拡大が重なり、さらにはめぼしい新作の公開もなかったためか、1位から7位までが前週とまったく変わらない事態に。公開7週目を迎えた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(日本公開中)が6度目の1位を獲得した。
週末3日間の興収は1100万ドル。前週比21.4%ダウンと低い下落率に踏みとどまり、比較的初動に偏りがちなマーベル作品としては『ブラックパンサー』(18)以来となる公開7週目での1000万ドル超えを達成。北米累計興収は週末の段階で7億3500万ドルに達しており、『アバター』(09)の尻尾が見える位置にまでやってきたことになる。とはいえ次週末には「ジャッカス」最新作やローランド・エメリッヒ監督の新作が控えており、さすがにここで首位を明け渡すことになるだろう。
そうなると、『ノー・ウェイ・ホーム』がさらなる記録の上積みを得るためのカギとなるのは2月8日(火)に発表される第94回アカデミー賞でノミネートを獲得することだろう。例年通りアカデミー賞ノミネート発表前に有力作が上映館数を増やしており(2月1日に締め切られたノミネート投票前の最後のアピールでもある)、『ベルファスト』(3月日本公開)は前週比250%、『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)は前週比168%とひときわ存在感を発揮。もっともこの2作品は作品賞入りはほぼ当確状態と言われており、どれだけ多くの部門で候補入りするかに話題は集中している。
前週よりわずかながらも上映館を増やした濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(日本公開中)は、『ノー・ウェイ・ホーム』と同様に作品賞10枠のうち2〜3枠をねらう混戦の最中にいると思われる。その一角でもあるギレルモ・デル・トロ監督の『ナイトメア・アリー』(3月25日日本公開)は、前週よりも上映館数を713増やして1103館となり、北米累計興収1000万ドルを突破。前週の17位から11位へと大きなジャンプアップを決めた。しかし多くの劇場で上映されているのは、1月14日の週末にニューヨークとロサンゼルスで上映され好評を博したモノクロバージョン『Nightmare Alley: Visions of Darkness and Light』の方だ。
元々フィルムノワールの傑作『悪魔の往く町』(47)をリメイクした作品とだけあって、ストーリーとモノクロ映像の親和性は抜群であろう。近年では『パラサイト 半地下の家族』(19)や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)など、カラー版から少し経ってモノクロ版が製作されているが、今回のようにカラー版とモノクロ版が同タイミングで劇場上映されることは珍しい。ケイト・ブランシェットの全米俳優組合賞ノミネートで賞レースへの弾みをつけている同作は、この試みの成功でオスカー作品賞候補への最終切符を掴むことができるのか。大いに注目が集まるところだ。
文/久保田 和馬