北米ランキングは『アンチャーテッド』がV2!毎年恒例、オスカーノミネートの短編映画集が登場
前週に引き続き、トム・ホランド主演の『アンチャーテッド』(日本公開中)が1位を獲得した先週末(2月25日から27日)の北米興収ランキング。連休週末の翌週とあって上位を賑わす規模の新作タイトルの公開はなく、ランキング上位に変動は見られず。『アンチャーテッド』は3日間で前週比およそ半減の2300万ドルを売り上げ、北米累計興収は8300万ドルに到達。暫定で2022年公開作のトップに躍りでた。
新作タイトルでベストテンに滑り込んだのは2タイトル。『ハチェット レジェンド・ネバー・ダイ』(13)のB.J.マクドネル監督のホラーコメディ『Studio 666』が2306館で興収154万ドルを売り上げて8位に。そしてジョー・ライト監督とピーター・ディンクレイジがタッグを組み、これまで幾度となく映像化されてきた名作戯曲のミュージカル版を映画化した『シラノ』(日本公開中)が797館で興収138万ドルを売り上げ9位に登場した。
賞レースでの善戦も期待されながら第94回アカデミー賞では衣装デザイン賞にノミネートされるだけに留まった『シラノ』は、上映館の少なさもあってか少々寂しい出足。アカデミー賞の選考資格を得るために急遽組まれた年末のロサンゼルスでの限定公開もひっそりしたものに終わるなど不運続き。それでも批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家の86%、観客の86%から好意的なレビューを獲得しており作品評価は好調。ライト監督は『つぐない』(07)での大出世以降、批評的には失敗と成功を交互に繰り返しており、今回は無事に後者となったようだ。
そんな静かな興収ランキングのなかで、15位にランクインしたのは「2022 Oscar Nominated Short Films: Live Action」。つまり日本時間3月27日(月)に授賞式が行われる第94回アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされた作品をまとめて上映する恒例の企画で、例年アカデミー賞の授賞式前後に行われている。10年近く前までは100館前後での上映だったが徐々に上映館数を増やし、コロナ禍前では200館前後。そして今年は355館での上映と、メジャースタジオによる長編映画の長尺化が進む昨今、かえって短編映画への注目度が高まっていることを伺わせる。
興行収入で見ると、今年のオープニング成績は43万4107ドル。2018年にはオープニング興収69万ドルを記録しており、年によって(つまり上映される作品の話題性によって)まちまちな結果になりがちなのは致し方あるまい。ちなみに今年の5作品では、昨年『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』で第93回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたリズ・アーメッドが出演する『The Long Goodbye』の注目度が高く、ほかにキルギス映画とデンマーク映画、ポーランド映画も入るなど国際色豊かな顔ぶれが並んでいる。
短編実写映画賞といえば、過去にはタイカ・ワイティティやマーティン・マクドナーなど、後に注目を集める気鋭監督たちを多く輩出してきた映画ファンにとっては見逃せない重要な部門。しかし先日から話題になっている通り、今年の授賞式のテレビ中継では編集賞やメイキャップ&ヘアスタイリング賞、作曲賞、美術賞、録音賞、短編アニメ賞、短編ドキュメンタリー賞と同様、カットされてダイジェストで発表される予定に。裏方といえどもひとつでも欠けたら映画は成立しないし、短編作品は日本でも北米でも観られる機会が決して多くないが実写・アニメ・ドキュメンタリー問わず映画界の未来を担う才能が隠れている。その重要性にもっと気付いてもらいたいと思わずにはいられない。
文/久保田 和馬