ジェニファー・ロペスが語る、50代で果たしたロマコメ映画へのカムバック「故郷に帰ってきた気分!」
世界的歌姫ジェニファー・ロペスが主演と製作を兼任したロマンティック・コメディ『マリー・ミー』(公開中)。劇中で流れる楽曲のアルバムも、映画と同時進行で制作したという彼女は「アルバムと映画を同時に作るのはこれが初めてのことだったので、とても楽しかった。私の二つの世界が一緒になったように感じました」と満足そうに振り返る。
「なかでもマルーマと一緒に歌ったタイトルソングの『Marry Me』は、これまで誰かとデュエットした曲のなかでも一番好きで、『Nobody is Watching Us』は心から感情移入できる曲。すべての曲が本当に好きなのだけど、特に『On my Way』は私にとって人生そのものといえる大切な曲。歌のなかで完璧に感情が歌われていて、映画のなかにもとてもうまくマッチしている。きっと誰もが共感することができると感じました」と、これらの歌曲が本作の重要な要素となっていることを熱弁した。
本作はボビー・クロスビーの同名グラフィックノベルを原作に、スーパースターと冴えない数学教師の“ギャップ婚”を描いた物語。世界的な歌姫カット・バルデスは、音楽界の超新星バスティアンと大観衆の前で華々しく結婚式を挙げる予定だったが、そのショーの直前になって彼の浮気が発覚。失意のなかでステージに立った彼女は、観客のなかから一人の男を指名して突然プロポーズ。その男はバツイチの数学教師チャーリー。マスコミやファンが大混乱となるなか、2人の前途多難な結婚生活が幕を開けることに。
「カットは自らの人生を誇りに思えるものに築きあげてきた、自信に満ち溢れたアーティストです。でもその反面、私生活の面で彼女の人生は満足のいかないことばかり。そこにオーウェンが演じるチャーリーが現れ、彼女は人生の見方を変えることになります。名声に囚われ、自分の人生を持つことができないと思っていた彼女は、チャーリーによってそれが可能であると教えられるのです」と、ロペスは自身が演じた役柄について解説。
歌手として活動する前からも女優として様々な役柄を演じてきたロペス。本作で演じるカットは彼女自身と重なる“世界的な歌姫”という役どころ。「私のなかにはカットと同じような部分があり、カットにも私自身が反映されていると思います。例えばブランディングなどいろいろな分野に注力しているところなんかですね(笑)。それでも演じるうえで難しいと思える瞬間がいくつもあり、それがかえってカットを真実味を帯びたキャラクターにしてくれたのだと感じています」。
歌手、女優はもちろん実業家としても着実にキャリアを重ね、52歳のいまもトップランナーとして走り続けるロペス。キャリア初期の2000年代前半には、“ロマコメの女王”と呼ばれる女優の一人として、『ウェディング・プランナー』(01)や『Shall we Dance?』(04)などの傑作ロマコメ映画に立て続けに出演していた。彼女自身も「映画ファンとして、ロマンティック・コメディが大好き」だと明かす。「『恋人たちの予感』や『キスへのプレリュード』などを観て育ってきました。ここ数年、こういう映画をやってこなかったのでとてもうれしいです」と喜びを爆発させると、「なんだか故郷に帰ってきたような気分です」と表現する。
そして「ロマコメ映画を観る側はいつも、最終的には主人公2人が結ばれることを知っているので、まったく新しいものを作ることは難しい。そのなかでも、いかに前に観た映画と違うと思わせるかが肝心」と、ロマコメというジャンルをおもしろくするためのポイントを語る。「エンディングに行き着くまでの旅路や、キャラクターたちのやりとりもどれだけ興味深いものにしていくか。そういったことがうまく書かれた脚本に出会えたら、私はぜひ演じてみたいと思います」と、ロマコメ映画への強い意欲をのぞかせた。
構成・文/久保田 和馬