「コウノドリ」作者、鈴ノ木ユウが『ベイビー・ブローカー』に共鳴「生まれや育ちが不幸であっても、どんな命も奇跡」

インタビュー

「コウノドリ」作者、鈴ノ木ユウが『ベイビー・ブローカー』に共鳴「生まれや育ちが不幸であっても、どんな命も奇跡」

「どんな命も、“生まれてきてくれただけで、ありがとう”」

是枝監督は、本作の脚本を書きながら韓国で様々な取材を行い、赤ちゃんポスト出身の子どもたちの声にも耳を傾けたことで、「捨てられた子が、生まれたことを後悔するような着地にはしたくなかった」と本作に込めた想いを明かしている。鈴ノ木は、自身の代表作で実写ドラマも話題を呼んだ「コウノドリ」との共通点を感じることも多かったと語る。

産科医・鴻鳥サクラを主人公に、産科医療の現場をリアリティたっぷにり描く「コウノドリ」
産科医・鴻鳥サクラを主人公に、産科医療の現場をリアリティたっぷにり描く「コウノドリ」[c]鈴ノ木ユウ/講談社

「コウノドリ」は、産科医の鴻鳥サクラを主人公に、妊娠、出産から見えてくる人々の結びつきや葛藤と、医療現場の奮闘を描く人気コミックで、鈴ノ木は、未受診妊婦や中学生妊婦の出産など、恵まれない環境で生まれてくる命についても描いてきた。そんななか、彼が常に大事にしてきたのは「生まれや育ちが不幸であっても、それは関係ない。どんな命も奇跡であり、“生まれてきてくれただけで、ありがとう”ということ」だそうだが、そういった作品を貫くテーマは、まさに『ベイビー・ブローカー』とも重なるものだ。

鈴ノ木は「“生まれてきてくれただけで、ありがとう”って、多くの親が赤ちゃんにそういった想いを抱いていると思うし、赤ちゃんのころには、多くの人がかけられてきた言葉かもしれません。様々な事情を抱えて生きる人々が描かれた『ベイビー・ブローカー』を観て、それって、年齢に関係なく、大人になっても、おじいちゃん、おばあちゃんになってもかけられたい言葉だなと改めて思いました。だって、大人になってもそう思いたいし、そう言われたいですよね。僕も帰ったら、息子にそう言ってもらおうかな」と目尻を下げる。

成り行きから赤ん坊を売るため、共に旅をすることになったサンヒョンたち
成り行きから赤ん坊を売るため、共に旅をすることになったサンヒョンたち[c] 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED


鈴ノ木が「コウノドリ」に着手したきっかけは、自身の長男の誕生と、妻からの「産科医の漫画を描いてみたら?」という言葉。妻の知人だった、りんくう総合医療センターの産科医に話を聞きながらイメージを膨らませていったという。「コウノドリ」のサクラと『ベイビー・ブローカー』のドンスには、“養護施設で育った過去がある”という共通点もあるが、一体、サクラはどのようにして生まれたキャラクターなのだろうか。

「コウノドリ」
[c]鈴ノ木ユウ/講談社

「産科医の先生からは『未受診妊婦が出産に来て、注射針を盗んで帰ってしまった人もいる』など、すごい話をいろいろと聞いて。赤ちゃんを置いていなくなってしまうお母さんも、実際にいるそうです。『その赤ちゃんはどこに行くの?』と聞いたら、『乳児院に行く』と。その後、乳児院や児童養護施設にも取材に行きましたが、子どもたちを見て『この子たちみんな、いい人に出会ってほしいな』と思っていました。僕らは誰しもがそうだけれど、いい人と出会うことが大切。“生まれてよかったな”と思える環境を作ってくれる大人と出会えれば、そこからどう生きるかは自分次第。きっと、どんな生き方だってできるはずです。そんな想いを込めて、乳児院と養護施設で育ち、医者になっていくサクラを描きました」と希望を注ぎ込んだ。

■鈴ノ木ユウ
漫画家。2007年に「東京フォークマン/都会の月」で第52回ちばてつや賞に準入選、2010年には「えびチャーハン」で第57回ちばてつや賞に入選する。2011年、「おれ達のメロディ」をモーニング(講談社)に短期集中連載。同誌にて2013年から2020年にかけて産科医療を題材とする「コウノドリ」を連載し、TVドラマ化も果たす。現在は「コウノドリ〜新型コロナウイルス編」をモーニングで、司馬遼太郎原作「竜馬がゆく」を週刊文春で連載中。
・講談社「コウノドリ〜新型コロナウイルス篇」:https://comic-days.com/episode/3269754496893217392


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