SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で国際コンペ作品賞は仏映画!リアル開催への喜びと今後の課題とは?

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で国際コンペ作品賞は仏映画!リアル開催への喜びと今後の課題とは?

若手クリエイターの登竜門とされる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」のクロージングセレモニーが、7月24日にSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザの映像ホールで開催され、オンラインでも生配信された。国際コンペティション長編部門の優秀作品賞はサミュエル・セイス監督のフランス映画『揺れるとき』が、国内コンペティション長編部門の優秀作品賞は余園園監督作『ダブル・ライフ』が、SKIPシティアワードは霧生笙吾監督作『Journey』が受賞した。

7月16日よりスタートした第19回目の同映画祭は、3年ぶりのスクリーン上映と、オンライン配信を併用した初のハイブリッド開催となったが、セレモニーでは、リアル上映された喜びの声が多数挙がったのも印象的だった。会期中は世界99の国と地域から厳選された「国際コンペティション」10作品、「国内コンペティション」長編部門6作品、短編部門8作品が上映された。

国際コンペティション部門で最優秀作品賞受賞『揺れるとき』のサミュエル・セイス監督(左)
国際コンペティション部門で最優秀作品賞受賞『揺れるとき』のサミュエル・セイス監督(左)

国際コンペティション長編部門を制したフランス映画『揺れるとき』のサミュエル・セイス監督は「今回は様々な美しい作品との出会い、美しい才能たちとの出会いを堪能することができました」とまずは来場できた喜びを述べたあと、本作について「ある少年の幼少期を描くこと、それは年齢的に非常に映画的な美しい時代を捉えようという試みでした」と解説。

そして、コロナ禍での上映について監督は「皆さんがなかなか映画館へ足を運んでくれないという問題を我々は抱えているのですが、皮肉なことに映画を作る側としては、再び活力がみなぎってきている状態です。技術革新においても新たな領域への挑戦が始まったりしていますし。でも、やはり映画というのは映画館で、共同体として体験するべきものだと、僕は信じています」と語った。

【写真を見る】国際コンペティション部門審査委員長の寺島しのぶがビデオメッセージを贈った
【写真を見る】国際コンペティション部門審査委員長の寺島しのぶがビデオメッセージを贈った

国際コンペティション部門審査委員長の女優、寺島しのぶは現地入りできず、リモートでの参加となった。『揺れるとき』について「この映画には、私たち審査員みんなが心を打たれたと思います。主人公である男の子から、最後の最後まで目が離せませんでした。また、映画としての完成度の高さや、未来が明るいところなど、すばらしい映画を観せていただきました」と絶賛。

続けて寺島は「国際コンペティション10本あるなかで5本がフランス出資の作品でした。やはりフランスは、芸術に対する理解が違うんだなと、私たち日本人は見せつけられてしまいました」とコメント。

国内コンペティション長編部門優秀作品賞受賞『ダブル・ライフ』余園園監督
国内コンペティション長編部門優秀作品賞受賞『ダブル・ライフ』余園園監督

国内コンペティションの長編部門で優秀作品賞を受賞した『ダブル・ライフ』の余園園監督は「審査員の皆さま、映画を観ていただいた皆さま、本当にありがとうございました。これからもっと頑張りたいと思います」と緊張しながら挨拶。

『ダブル・ライフ』について、国内コンペティション審査員である編集者でライターの月永理絵は「今回国内コンペティション部門全作品を通して、日本映画の様々な側面を見ることができました。そのなかでも『ダブル・ライフ』はいくつもの日本映画を参照しながらも、そこからオリジナルの作品をどう立ち上げるか、とても真摯に向き合われた作品だと感じました。また、映画的としか言いようのないすばらしい瞬間がたくさんあふれておりました」と高く評価した。


国内コンペティションの短編部門で優秀作品賞を受賞した『サカナ島胃袋三腸目』の若林萌監督は、たくさんの人たちの助けを借りられたからこそ、作品が完成できたと、多くの人々に感謝し、運営スタッフ、観客の方々に手厚く礼を述べたあと「3年ぶりのリアル開催で、上映できたことを本当にうれしく思っております」と紅潮しながらコメント。

国内コンペティションの短編部門の審査員である鶴田法男監督は「国内コンペティション短編部門はジャンルも言語も多種多様でした」と語ったあとで「『サカナ島胃袋三腸目』は、そのなかでも非常に発想が豊かで、いろいろなものが詰め込まれていつつ、それをきれいにまとめているところに感心しました」と称えた。

国内コンペティション部門SKIPシティアワード受賞の『Journey』の霧生笙吾監督
国内コンペティション部門SKIPシティアワード受賞の『Journey』の霧生笙吾監督

そして、次回作への支援が受けられるSKIPシティアワードは、霧生笙吾監督作の『Journey』が受賞。国内コンペティション審査委員長を務めた撮影監督の芦澤明子は本作について「SFものは、なかなかこういう規模の個人映画では入り込めない分野だと思いますが、そこに対して果敢に挑戦されたってことで、これからの期待を込めて、この賞を差し上げたいと思いました。このSKIPシティにある機材を、好きなだけ使い倒してください。次回作を期待しています」とエールを贈った。

霧生監督は「正直、絶対に賞はもらえないだろうって思ってました。昨日、ちょうど上映があって、この映画は大学の卒業制作なので、指導してくれた教授も来てくれましたが、ちょっと怒られたので(苦笑)。いろいろ足りないことだらけで、課題が山積みですが、映画祭を通していろんな意見をもらえました。また、逆に映画を作る楽しさを、今回の製作を通して学べたので、SKIPシティの機材をめちゃくちゃ使ってまたSF映画を撮りたいなと思います」と胸を張った。

国内コンペティション審査委員長の撮影監督、芦澤明子
国内コンペティション審査委員長の撮影監督、芦澤明子

そして芦澤審査委員長は、国内コンペの総評として「驚くべきレベルの高さでした。しかも厳しいコロナ禍での撮影で」とまずは制作陣をねぎらった。そのあと「自分の作った映画が大きなスクリーンで観れるというチャンスはなかなかないこと。やっぱり映画は、スクリーンで観てこその映画だと私は確信しておりますので、こういうありがたい環境を与えられたということが、皆さんにとって良かったと思います」としみじみ語った。

国際コンペティション部門審査委員の松永大司監督
国際コンペティション部門審査委員の松永大司監督

また、国際コンペティション部門審査委員の松永大司監督が、若き監督たちに向けて語った自身の経験談も印象的だった。
「コロナ禍で大変ななかで、監督、スタッフのみなさんが作られた映画なので、みなさん、一生忘れないんじゃないかなと。実は僕が監督デビューしたのは2011年3月26日で、東日本大震災があった時で、劇場にお客さんが来ないなかでの上映となりましたが、いまでも一生忘れることはないです。お客さんに映画を観てもらうことは、いまも映画を作る原動力になっています」。

最後に、実行委員会副会長である奥ノ木信夫川口市長が無事開催できたことへの感謝を述べたあと「今年はリアル開催の観客が3500人以上、オンライン配信は1000人以上にご視聴いただいています。配信は7月27日(水)まで続くから、視聴者数はまだまだ伸びるのではないかと」と手応えを口にした。

川口市長で、実行委員会副会長の奥ノ木信夫氏
川口市長で、実行委員会副会長の奥ノ木信夫氏

さらに奥ノ木市長は「寺島さんのお話にあったように、フランスみたいに、文化の交友に対して国を挙げて応援してくれる体制がもっとあればと」と語ったあと、2025年度完成予定で、さいたま新産業拠点SKIPシティに整備されるNHKの「川口施設(仮称)」の話題に触れ「これからこそ、川口のSKIPシティを中心に国際的にいろいろなものを発信していきたい。埼玉県の力を借りながらいろいろとスクラム組んでやらせていただければと」と力強く締めくくった。


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■SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022
日程:【スクリーン上映】7月16日(土)~7月24日(日)、【オンライン配信】7月21日(水)~7月27日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:http://www.skipcity-dcf.jp/
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