とよた真帆、亡き夫・青山真治監督特集に感謝。結婚生活は「おもしろがらないとできなかった」

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とよた真帆、亡き夫・青山真治監督特集に感謝。結婚生活は「おもしろがらないとできなかった」

“映画の新しい才能の発見と育成”をテーマに掲げ、1977年にスタートした「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」。若手映画監督の登竜門として知られ、これまで160名を超えるプロの映画監督を輩出してきた。第44回PFFが開催中で、今年3月に逝去した青山真治監督の特集上映が9月23日と24日の2日間にわたって開催。9月23日には映画『月の砂漠』(03)が上映され、上映後のトークイベントに、2002年に青山監督と結婚し、以来20年連れ添った妻で俳優のとよた真帆が登壇した。

とよた真帆が出演した青山真治監督の『月の砂漠』
とよた真帆が出演した青山真治監督の『月の砂漠』[c]2001/2003「月の砂漠」製作委員会

2001年にカンヌ映画祭コンペティション部門へ出品された同作。若くしてベンチャー企業で成功を収めた男の心の漂流を、当時5年ぶりの映画出演であった俳優の三上博史が、絶妙な演技で表現している。

三上演じる永井の妻のアキラ役で出演したとよたは、2001年にカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された同作を「20年ぶりくらいに観た」とコメント。「皆さんよくそういうことをおっしゃると思うんですけど、芝居やり直していいですか、みたいな感じ。再撮をお願いします(笑)。20年前となると別人みたいな感じがします。自分じゃないみたい」と感想を口にした。

青山監督との出会いのきっかけとなった『月の砂漠』について語るとよた
青山監督との出会いのきっかけとなった『月の砂漠』について語るとよた

『月の砂漠』は、とよたと青山監督との出会いのきっかけとなった作品。当時について、とよたは「私はその時に朝の番組をやっていて、1年くらいドラマもやっていたんですけど、情報番組に触れて拘束されている1年だったので、“芝居したい欲”が満タンにあった」と振り返った。また、「ちょうどそれ(情報番組)が終わって、『芝居したい!』という時にお話をいただいて、二つ返事で『ありがとうございます』って」とオファー時の心境を回顧。

さらに、青山監督の第一印象を聞かれると「監督は当時、腰まで(髪の)毛があったんですよ。私、(青山監督の)作品は観ていたんですけど、容姿を知らなかったのでびっくりして」と明かした。また、「でもそれでつかみはオーケーみたいになっちゃって(笑)。変わった人が好きだったんです」と、青山監督の当時の風貌に惹かれたことを告白。「若いころはとても変わったキャッチーな人に弱いっていう。変なものに惹かれるみたいな。不思議な魅力のある人に惹かれるっていうタイプだったので、私より“髪が長い”とか“大きい”とかそういう印象」と笑った。

2022年3月21日に頸部食道がんのため亡くなった青山監督
2022年3月21日に頸部食道がんのため亡くなった青山監督撮影:池田正之

青山監督については、「家ではアイデアレベルで、企画の話などもしていました。でも、(考えを)軽く言葉にしない人」と表現。「彼が亡くなったあと、パソコンの中に企画書とかいっぱい入っていて、いまスタッフとそれを形にしているという感じ」と現状を明かし、「いろいろ考えてたんだなと。私が知らない作品もいっぱいありますし、これ言っていたやつだ、というのもあるし」と話した。

その後、青山監督との結婚生活にも言及し、「おもしろがらないと結婚生活はできなかった」と語る。とよたは、「(青山監督が)飲んだくれて道の真ん中でぼーんって寝てたら、近所の方が『真帆さん大変!旦那さんが!』みたいなことがあるわけですよ」と過去のエピソードを打ち明け、「『本当にひどい妻だと思うんですけど、写真を撮らせていただきます』とか言って、カメラで何枚も撮って、それを家に貼り出して。酔っ払った青山を事務所に寝かして、昼くらいに起きるじゃないですか。それで、リビングに行くと、(青山監督の)醜態がばーっとプリントアウトされている。普通だと『すみません』とか言うけど、すごい満足そうにニコニコする。そんな変態でしたから。こっちが楽しむしかない」と、楽しそうに思い返していた。

青山監督との結婚生活についても語ったとよた
青山監督との結婚生活についても語ったとよた


青山監督の人柄に関しては、「Twitterで誰かが『映画館はほこりっぽいから行かないほうがいい』とかって書くと、それにムキになって反応するような監督。何度止めたことか」と苦笑。「学生みたいな子を相手にムキになって戦っていく。『そんなことしなくていいから!監督が!』みたいな。そうすると『だってむかついちゃったんだもん』みたいな。そういう熱い人でした。把握できるところは止めていました(笑)」と懐かしんでいた。

「第44回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2022」は9月25日(日)まで国立映画アーカイブで開催
「第44回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2022」は9月25日(日)まで国立映画アーカイブで開催

「映画の未来を青山監督がどう見ていたのか」という質問には、「私の口から言っていいのかわからないですけど、たぶんとっても悩んでいたし落ち込んでいたし、がっかりもしていただろう」と回答。「青山が撮りたいと思っていた映画が何本もダメになっているんですよ。20年の間に何本も何本も。本当に撮ってもらたいかった作品があるんです。ラストシーンを聞いていて、私も泣いたくらい」と、日の目を見ることがなかった映画の構想もあったそう。「それも撮れなかったと思うと、それはすごい悲しいですね」と吐露した。最後に撮ろうとしていた青山監督の脚本で、キャスティングプロデューサーを務めているというとよた。今後の続報に期待したい。

取材・文/山田健史

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