稲垣吾郎、主演映画『窓辺にて』で役作りなし!今泉力哉監督に「心の中を見透かされていた」
第35回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された稲垣吾郎主演映画『窓辺にて』(11月4日公開)が、10月26日にTOHOシネマズ日比谷で上映され、稲垣と今泉力哉監督が舞台挨拶に登壇。稲垣たちは観客とのティーチインに答えた。
『窓辺にて』は『愛がなんだ』(19)の今泉監督による完全オリジナル脚本のラブストーリー。稲垣は妻の浮気に思い悩んでいるフリーライターの主人公、市川茂己役を演じた。
リアルで生き生きとした台詞回しに定評がある今泉作品だが、今泉監督は「自分が感じていることから書くことが多いですが、映画は決め台詞みたいにしてしまうと、現実世界からかけ離れてしまいます。だから、普段使っている言葉を使おうかと。今回は、小説家の設定があるので、しゃべり言葉と文語的なものが混ざっているけど、稲垣さんが話すことで、言葉が浮かずに成立するかなと」と、稲垣への信頼感を口にした。
信頼が裏切られるという物語を演じた稲垣について「現場での稲垣さんを見て、これまでSMAPのメンバーとして、自分が想像できないような期待と信頼を背負っていた方だということがわかりました。だから言葉に重みが出たし、役に稲垣さんの人生ものっかった気がします」と高く評価する。
稲垣は「監督がいままでの僕の経験を照らし合わせて見てくれてるってことはわからなかったですが、茂己のことを理解はできました。僕は結婚して妻がいるわけじゃないし、浮気をされたらショックはショックでしょうけど、その場で上手く感情表現はできないなと。普通だったら、このくらい落ち込まなきゃいけないという線があるとして、そこまで達してないといけないものかなと思ってしまいます。でも、いろんな登場人物の価値観があって、自分で言うのもあれですが、登場人物たちがチャーミングでかわいらしく感じる作品だと思います」とアピールした。
観客から、今回の役作りについて尋ねられた稲垣は「ここまで役作りをしないでやるってのはないくらい、僕が思っていること、言いそうなことばかりでした。あてがきって、僕のパブリックイメージに当てて書くことはあったと思うけど、僕の素、心のなかを見透かされてるような感じだったので。自然にそこにたたずんでいれば茂己として存在できるなと思って演じました。あまりお芝居お芝居しすぎないという今泉組のお芝居にチューニングしていくってことで、それは俳優としても最高の体験でした」としみじみ語った。
また、本作について今泉監督は「現実世界にある、良い悪いとされていることが設定としてあって、それを疑うという作品です」と定義した。
「浮気や不倫は世の中的にもちろん良くないことだけど、楽しい時間だから良くないとされていて、実はそのなかで、やめておいがほういいよとかいう罪悪感もあるけど、浮気相手にとっては片思いで、絶対悪とされることについても、そんなに簡単なことかなと思ったりします。また、スポーツ選手の引退もそうですが、手放すとかやめることって、次に進むためにはぜんぜんマイナスじゃないかなと」。
さらに「悩みについての話ですが、共感やみんなが知ってる感情が映画になりやすいけど、本作はほかの人には理解されないことを主題にしています。世界で戦争が起こっていて、それと自分の小さな悩みを比べて、ちっぽけなことで悩むなんて、と思うことはないなと。恋愛で死ぬ人もいるし、1つの悩みを大切にしたいと思って、それを描きました」と解説した。
第35回東京国際映画祭は、10月24日~11月2日(水)の10日間にわたり、シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催中。
取材・文/山崎伸子