ブラッド・ピット設立の製作会社「プランB」の魅力!タブーに切り込む良作で、アカデミー賞常連に
ゴールデン・グローブ賞やブロードキャスト映画賞など、アカデミー賞の前哨戦で存在感を放っている『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2023年1月13日公開)。本作を手掛けたのは、ブラッド・ピットらが参画する製作会社「プランB エンターテインメント」。すでにアカデミー賞作品賞を2度受賞している同社の魅力に迫っていこう。
2017年にニューヨーク・タイムズ紙に掲載され、後に世界規模で起こる“#MeToo”運動の火付け役となった、ハリウッドの大物プロデューサーの性的暴行事件。それを告発する記事を取材し調査したジャーナリストたちの闘いが描かれる本作。『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20)のキャリー・マリガンと、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(17)のゾーイ・カザンが主人公となる2人の女性記者を演じている。
ピットとジェニファー・アニストン、ブラッド・グレイが2002年に設立した「プランB」は、ピット主演の『トロイ』(04)やティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』(05)といったヒット作を世に送りだし、続けて手掛けた『ディパーテッド』(06)が第79回アカデミー賞作品賞など4部門に輝き一躍注目を浴びる。その後『それでも夜は明ける』(13)と『ムーンライト』(16)でアカデミー賞作品賞を受賞するなど、アカデミー賞候補作を次々と輩出し、映画ファンから絶大な支持を獲得。
そんな「プランB」が評価される大きな理由の一つが、社会的・政治的なテーマに果敢に切り込んでいく作品づくりの姿勢だ。それは“ハリウッドのタブー”と言える部分に触れる本作でも貫かれている。ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道記者のジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーによる調査が報じられてからわずか数か月後の2018年4月に、「プランB」はアンナプルナ・ピクチャーズと共にこの記事の映画化権を確保したという。
「初めて話した瞬間から、ただ圧倒されました」と語るトゥーイーは「高いクオリティの意義深い作品を作ってきたという実績だけでなく、この記事をできるだけ正確に、できるだけ誠実に伝えようとする彼らの姿勢に感銘を受けました。こういったことは、ジャーナリストである私たちにとって非常に重要なことです」と、「プランB」がこれまでの作品で築き上げてきた信頼と、会社としてのスタンスに感銘を受けたことを明かす。
実際に本作の製作陣は、被害に遭った女性たちや目撃者とも連絡を取り合い関係を構築しており、プロデューサーを務めた「プランB」のデデ・ガードナー社長は「この物語に登場する実在の人物が脚本づくりに関わることは、私たちにとって極めて重要なことでした。そのおかげで、あらゆるレベルでより正確で、真実味や深みを持った物語になったと思います」と語っている。タブーに果敢に踏み込み、真摯に向き合った本作。映画業界の未来へとつながる重要な一本を、是非とも劇場で目撃してほしい。
文/久保田 和馬