「舞妓さんちのまかないさん」に大映映画の影響が!?美術監督・種田陽平が語る『夜の河』の京都|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「舞妓さんちのまかないさん」に大映映画の影響が!?美術監督・種田陽平が語る『夜の河』の京都

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「舞妓さんちのまかないさん」に大映映画の影響が!?美術監督・種田陽平が語る『夜の河』の京都

数々の名作を生みだしてきた大映映画作品を4K化し、選りすぐりの傑作選を上映する「大映4K映画祭」が、1月20日より角川シネマ有楽町にて開催されている。1月29日には4K版初披露の目玉作品の一つ、山本富士子主演の『夜の河』(56)が世界初上映。上映後にはアフタートークゲストとして美術監督の種田陽平が登壇した。

老舗京染屋の長女で染物職人のきわと、既婚の大学教授の竹村との恋を描いた『夜の河』。本作の大ヒットにより山本はスターの地位を確立し、大映の看板女優として活躍していくことになる。

『夜の河』に詰め込まれた工夫を明かす種田陽平
『夜の河』に詰め込まれた工夫を明かす種田陽平

種田は、『ヴィヨンの妻』『空気人形』で文化庁芸術選奨・文部科学大臣賞、2011年には紫綬褒章を受章。ジブリ作品やチャン・イーモウ、クエンティン・タランティーノ、是枝裕和など国内外で美術監督を務め、世界で活躍する映画人として知られている。是枝監督の「舞妓さんちのまかないさん」(Netflixにて独占配信中)でも美術監督を務めている種田は、壇上に上がると「美術の視点で話しますけど、きれいに修復されている映画なので、その修復された結果、どう見えるかみたいなことも含めて話していきたい」と挨拶した。

種田は、「僕も長い間『舞妓さんちのまかないさん』で京都にいて、この映画(『夜の河』)から70年近く時間は経っているんですけど、いろいろ思うことがある」とした上で、「いろんな作品が4Kでキレイになっていますが、この映画はカラーだということ」と、カラー映画の4K版であることに着目。

「しかも現代物。時代物は当時の大映は得意だったんですけど、現代劇はまだ少なかったらしいです。現代劇でカラーで撮っているのは大変なことだったらしいんですよ。撮影監督の宮川一夫さんもまだカラーを使いこなせていないし、吉村監督にとっては初カラー作品。ここにどんな工夫が見えてきているのかなと思っています」と続けた。

種田陽平はNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」で美術監督を担当
種田陽平はNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」で美術監督を担当

さらに、今作で描かれた京都について「京都って(建物が)茶色いんですよ。壁から柱から全部茶色いんです。この茶色というのが、(当時の)カラーで出せない。(色が)潰れちゃう、汚くなるということで、吉村監督と宮川さんと美術の内藤昭さんとで相談して、全部ねずみ色にしようということにしたらしいんです。障子の桟とか窓の枠とか扉とか、全部木という木がグレーに塗ってあるんです」と明かす。

そして「なんでねずみ色にしているかというと、大事なほかの色を出すため。この映画って染色の話じゃないですか。染め物の色を引き立たせる、あるいは着物の柄を出す。もっと言うと山本富士子さんの顔をきれいに見せるために、全部セットをきれいに塗っているんですよね。それがすばらしい」と色を変えた効果を説明し、称賛した。

また、今作では赤がキーカラーになっているとし、「その赤も宮川さんいわく、ただの真っ赤はだめなんですって。ちょっと朱色の、黄色の入った赤にしたくて、調整したらしい」と伝える。「いままでのDVDとかだと赤かったんですけど、今回の4Kだとちゃんと狙いの朱色(が出ている)。そこが美術としてはすごいなと思う」とコメントした。

『夜の河』では赤がキーカラーであった
『夜の河』では赤がキーカラーであった

「舞妓さんちのまかないさん」への影響について種田は、「影響は受けていないです。『舞妓さんちのまかないさん』をやってから『夜の河』を観たので」としながらも、「大映の映画は昔から好きだったので、自分のなかで京都でやるという時に、すごく意識したということはあると思います」と告白。

その後、スクリーンに実際の京都の景色と、『夜の河』や「舞妓さんちのまかないさん」内での京都の景色を投影し、自身が手掛けた「舞妓さんちのまかないさん」でも『夜の河』での工夫と同じく、「いろんな映画の断片や昔の資料を見ながら、ベスト・オブ・ベストの舞妓たちが暮らしている屋形を作ろうとした」と打ち明けた。

実際の京都と「舞妓さんちのまかないさん」内の京都の様子
実際の京都と「舞妓さんちのまかないさん」内の京都の様子


最後に種田は「70年近く前の映画たちといまの映画と、どっかで繋がっていたり、どっかで記憶を持っていて、そこにまた新たな映画の時代が始まるという風に思っています」と、当時と現代での作品の繋がりを実感していた。


取材・文/山田健史

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