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アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第21回 緊急会議

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アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第21回 緊急会議

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第21回は怪人たちの狙いについての緊急会議が行われる。

ピンキー☆キャッチ 第21回 緊急会議

イラスト/Koto Nakajo

防衛省内の会議室には都築の部下である遠山を書記係とし、上司の吉崎が席を並べた。遅れる事5分、防衛政策局・次長の木原が対面に座った。都築は電話で大臣の同席を要請したが、冷静な吉崎は「まずはヒアリングと確認だ。その上で対策と要請に移る」と、まずはごく限られた少人数での会議の席を設けた。木原はピンキー立ち上げの計画段階からも関わっており、なるほど話は早い。

「単刀直入に申し上げます。今まで怪人討伐に携わってきた中で、不可解な点がいくつかありました。順を追って説明しますと・・・」

都築はこれまでの経緯と気付きを早足で説明した。急拵えの会議であったため資料も何も無いが、一番近くで討伐に関わってきた都築の説明は熱を帯びた。

「・・・・と、ここまでの説明で何か疑問はおありでしょうか?」
「うん。その都築君が考える結界とやらだがね、相手の狙いはなんだと考えてるの?」

木原はずんぐりと固太りした身体をグイと前のめりにして聞いた。海外派遣や災害救援時などで現場を長く経験してきた男だ。独特の眼光と静かな圧がある。

「はい。もちろん推測の域を出ませんが・・。例えばこの東京に外からの侵入を防ぐ効力、つまり23区を孤立させようとしているのではないか。もしくは、これは少々オカルトじみた考え方になりますが、何かを呼び寄せるための、巨大な魔法陣と申しますか・・」

流石に防衛省の会議室で『魔法陣』と口にするのは違和感があったが、悪魔君世代の都築には他の言い方が思い浮かばなかった。『召喚』というワードを避けるのが精一杯だ。が、木原はニコリともせず鼻で笑うことも無かった。

「そもそも怪人の存在自体がオカルトなんだ、ここから先何が起きたって不思議じゃない。緊急時の鉄則は、常に最悪の事態を想定しながら動く事だ。上に気兼ねすることはない、思ったままを伝えればいい」
「ありがとうございます。それと不気味なのが、怪人が・・・サイズが、小さ過ぎると思うんです」
「サイズ?これまで出現した怪人の大きさは?」
「せいぜい180cmくらいかと。遠山君、データは出せる?」
「はい・・。小さいのだと135cm程度で、大きくても185cm程ですね。討伐の後は弾けてしまうので、おおよその記録にはなってしまうのですが」

ここまで話を聞いていた吉崎が組んでいた腕を解いた。

「次長。以前お話した通り、この怪人は宇宙から送り込まれているという説が濃厚です。毎回発生直前に、空からの青い光の筋が目撃されています。しかし我々は星人とは呼ばず、怪人と呼称している。その理由はお分かりになりますか?」
「勿論だ。まず容姿に統一感が無い事。そして能力が地球上に存在する何かしらがモチーフになっている事。故に何者かが地球上の文化を意識して造った創作物だと考えられるからだろう」
「おっしゃる通りです。単にこの地球を征服するのが目的なのであれば、もっと巨大で強力な怪人を造ればいい。しかし敢えて人間に近いサイズで造られている。我々が戦いやすくしているかのようにすら感じます」

都築が引き取った。

「能力もそうです。怪人が悪さをしても、民間人は少し生活に支障が出る程度なんです。怪人を造り、地球上に送り込む優れた科学力がありながらも被害は最小です。これまで死亡者も出ていません。もしこれが、相手が人間であればそこまでの罪には問われないでしょう。怪人だから倒してはいますが・・」


思いを巡らせているのであろう、木原は大きく背を反らそうとしたが、椅子のリクライニングがロックされていた。裏部分のバーを手探りで探し、改めて背筋を反らせ、目を閉じた。

都築達は木原の言葉を待った。防衛省は国の巨大な組織である。何をするにせよ民間の企業以上に上司のハンコが必要だし、それを押させるのは簡単ではない。各計画・実務一つ一つが国民の目を通して監査されているようなものであり、少しのミスが現政権をも揺るがしかねない騒ぎに繋がる。ましてやこの件は極秘に執り行わなくてはならない。急を要する事案ではあるが、慎重さも兼ね備えなければならないのだ。

木原はゆっくり目を開けると、またしばらく天井を眺めたまま思案していた。口元で小さく何かを呟いている。考えがまとまったのか、分厚い湯呑みに入ったぬるいお茶を一すすりすると、一堂を見まわしながら口を開いた。

「もしかすると奴らの狙いは・・。まあこれもあくまで推測の域を出ないが、聞いてくれ」


(つづく)

文/平子祐希

■平子祐希 プロフィール
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。
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