『ドラキュラ』アンドレ・ウーヴレダル監督が明かす、『エイリアン』『セブン』からの影響

インタビュー

『ドラキュラ』アンドレ・ウーヴレダル監督が明かす、『エイリアン』『セブン』からの影響

クラシックホラーの金字塔「ドラキュラ」の原点であるブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」。そのなかでも“最恐”との呼び声が高い第七章を初めて映画化した『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』(公開中)。本作でメガホンをとったアンドレ・ウーヴレダル監督は「これはドラキュラが何者であるかを知らない人々の視点から見た、まったく異なる語り口の作品だ」と、これまで数多く作られてきた“ドラキュラ映画”との違いを強調する。

ブラム・ストーカーの名作小説の“最恐”の第七章を初めて映画化
ブラム・ストーカーの名作小説の“最恐”の第七章を初めて映画化[c]2023 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

1897年に発行された「吸血鬼ドラキュラ」が、最初に映画化されたのはいまからおよそ100年前。ルーマニアのカーロイ・ライタ監督の『Drakula halála』(1921)を皮切りに、F.W.ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)やトッド・ブラウニング監督の『魔人ドラキュラ』(31)など、ホラー映画黎明期の代表的なホラーアイコンとしてその名を轟かせた。

その後もフランシス・フォード・コッポラ監督の『ドラキュラ』(92)や、ダリオ・アルジェント監督が3D技術を駆使して映像化した『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(12)など、現代に至るまで数えきれないほど映像化が重ねられ、そのたびにドラキュラの表現や語り口など常に進化を続けてきた。

『スケアリー・ストーリーズ 怖い本』などホラー作品を手掛けてきたアンドレ・ウーヴレダル監督
『スケアリー・ストーリーズ 怖い本』などホラー作品を手掛けてきたアンドレ・ウーヴレダル監督[c]2023 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

「私はこれまで見たことのないストーリーを発見することを大切にしています。できる限り、まったく新しい物語を構築するということです」と語るウーヴレダル監督は、過去の“ドラキュラ映画”について「どれもインスピレーションを与えてくれるし、とても刺激的な作品」と敬意を表す。そして「でも我々は、オリジナルなものを目指しました。ドラキュラ作品で船旅を描いた映画はまだ誰も見たことがない。脚本を読んだ時に、本作のその部分にとても魅了されました」と説明する。

そのうえで特に影響を受けた作品として挙げたのは、リドリー・スコット監督が手掛けたSFホラーの名作『エイリアン』(79)だ。「船内に悪魔的なモンスターがいて、血を求めて皆を殺そうとしている。けれどクルーたちは逃げ場がない。船の上で起きるこの章で描かれることは、『エイリアン』の宇宙船のなかで起きることと同じだと感じました。スクリーンで語るには打ってつけの設定であり、ドラキュラに対する新鮮な視点を生みだすもっとも自然な方法だと確信しました」。

【写真を見る】「クリーチャーは『エイリアン』そのもの」ドラキュラが“伯爵”ではなく凶暴なモンスターに?
【写真を見る】「クリーチャーは『エイリアン』そのもの」ドラキュラが“伯爵”ではなく凶暴なモンスターに?[c]2023 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

原作小説では、デメテル号の航海日誌をたどるだけの構成だった“第七章”に、あえてドラキュラを登場させる。さらに本作に登場するドラキュラは、これまでの“ドラキュラ映画”のような高貴で紳士的な男ではなく、悪魔さながらのモンスターとして描かれている。「クリーチャーデザインは『エイリアン』そのものだ」と、ウーヴレダル監督は堂々と語る。

「この映画の製作陣たちは皆、『エイリアン』からインスピレーションを得ていたと思います。ドラキュラを凶悪なモンスターにする。そのために何度も試作を繰り返しました。それは以前ギレルモ・デル・トロと一緒に仕事をして学んだことが大きかった」と、世界中のクリーチャー映画ファンを魅了する巨匠に刺激されたことを明かした。


「新しい物語を構築する」ことを目指し、新たなドラキュラ映画を作りあげた
「新しい物語を構築する」ことを目指し、新たなドラキュラ映画を作りあげた[c]2023 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

またウーヴレダル監督は「僕は映画監督として、いつも大好きな監督たちからインスピレーションを受けている」と、デル・トロ監督以外にもスタンリー・キューブリック監督やスティーヴン・スピルバーグ監督、デヴィッド・フィンチャー監督らの名前を挙げていく。なかでもフィンチャー監督の代表作『セブン』(95)を「シンプルで古典的、とても大好きな映画」と語り、本作でもそのストーリーテリングの巧さにインスパイアされたという。

「セットの装飾やカメラの位置、演技、すべてが美しい。でも映画の美しさというものは照明にもあります。今回の作品では、クリント・イーストウッド作品を手掛けてきたトム・ストーンが撮影監督を務めてくれました。彼はこの映画にとても美しい照明を与え、とても誇り高い映像を作りだしてくれました。それもこの作品のインスピレーションの一部となりましたし、おそらくフィンチャー監督の“完璧主義”から影響を受けたのでしょう」。

構成・文/久保田 和馬

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