「グランツーリスモ」生みの親・山内一典が語る、構想から20年越しで実現できた映画「一つの達成だと思う」

インタビュー

「グランツーリスモ」生みの親・山内一典が語る、構想から20年越しで実現できた映画「一つの達成だと思う」

「なにかを極めた人間は、ただうまいだけではなく頭も良いし、努力家だし、アプローチもシャープ」

「GTアカデミー」のプログラムが始動しはじめた2004年頃から、山内自身もレースに参加し始めた。実際にレースを体験して感じたゲームとリアルの違いを聞くと、実車の方が速く走れるという。「運転の技術自体は同じですが、実車の方がインプットされる情報が多いんです。例えば実車だとリアタイヤがほんの少しスライドする感覚も加速度の変化で体に入ってくる。ゲームではステアリングホイール(コントローラー)と目からの情報だけですが、実車の場合は体感できますからね」。さらに、モータースポーツそのものの全体像はレースを通して初めて実感したという。「レースには本当にたくさんの人が関わっているんです。たった1人のドライバーのために、あれだけチームクルーがいるスポーツはほかにはないと思います。それと事故の危険さ。本当に命がけなので、そこはビデオゲームの世界とまったく違いますね」という山内の体験は、今回の映画でも大きな見せ場になっている。

映画『グランツーリスモ』を通しモータースポーツの臨場感を体感できる!
映画『グランツーリスモ』を通しモータースポーツの臨場感を体感できる!

映画の中心的キャラクターが、「GTアカデミー」に参加してプレイヤーからプロレーサーに成長していくヤン・マーデンボローだ。劇中には彼がプロレーサーとなり、日本を訪れ憧れの山内と会う姿も描かれている。山内は実際に初めて彼と面会した時にオーラを感じたという。「なにかを極めた人間は、ただうまいだけではなく頭もいいし、努力家だし、アプローチもシャープ。そして人間的にステキなんだとプログラムを始めてから気づきました。勝負というものが結果的に人を成長させるんでしょう。ヤンも若いのに最初からオーラを纏っていて、すごい人物になるなと感じました」と述懐。ヤンと会った時にどんな会話を交わしたのかと聞くと「セットアップとかドライビングとか車の話だけでした」と笑う。ちなみにマーデンポロー本人はカースタントドライバーとして映画に参加し、レースシーンでハンドルを握っている。

ヤン・マーデンボローを演じるアーチー・マデクウィ
ヤン・マーデンボローを演じるアーチー・マデクウィ


「ゲーム上の物理シミュレーションをより正確なものにして、より実車のドライビング体験に近くする努力を続けた」

実際の「GTアカデミー」は日産の運営だが、山内にとっても重要なプログラムになったようだ。「僕自身はこれといった仕事をしていませんが、サポートという意味ではゲーム上の物理シミュレーションをより正確なものにして、より実車のドライビング体験に近くする努力を続けました。あとはレース中ひたすら心配することですね(笑)。やはりレースは危険ですし、次々に勝ち進まなければいけない過酷な世界でもありますから」と親心をのぞかせた。

映画『グランツーリスモ』は公開中
映画『グランツーリスモ』は公開中

中学、高校を通し自主映画作りをしていたという山内は、完成した映画について「観る人の気持ちをポジティブにさせてくれるエンタテインメントだ」と語った。「ニールは教科書的に、きちんと丁寧に映画を仕上げてくれました。雑なところがまったくなく、そこがすごく気に入っています。実際にあったストーリーを、エンタテインメントとして作ってくれた。そういう意味でも特別な映画になったと思います」。

取材・文/神武団四郎

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