安藤サクラ主演『百円の恋』の中国リメイク『YOLO』が、春節No. 1の記録的大ヒットに!
安藤サクラが主演を務め、後に「嘘八百」シリーズなどのヒット作を世に送りだす武正晴監督、現在放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の脚本家である足立紳がタッグを組んだ『百円の恋』(14)。本作を中国でリメイクした『YOLO』が2月10日に中国国内で公開され、記録的な大ヒットとなっている。
『百円の恋』は、2012年に山口県周南映画祭に新設された「松田優作賞」の第1回グランプリに輝いた足立の脚本を映画化し、どん底生活を送っていた32歳の主人公がボクシングを通して変化していく姿を描く物語。実家に引きこもり自堕落な日々を送っていた一子(安藤)は、妹が子連れで戻ってきたことをきっかけに一人暮らしを始める。そして働き始めた百円ショップに客としてやってきたボクサーの狩野(新井浩文)と出会い、距離を縮めていくのだが、幸せな日々は長くは続かず。一子は衝動的にボクシングを始める。
第27回東京国際映画祭の「日本映画スプラッシュ」部門でワールドプレミア上映され、同部門の作品賞を受賞したことで一気に注目を集めると、2014年12月20日からテアトル新宿などのミニシアターを中心に全国公開。撮影前3か月間のボクシングトレーニングと、主人公の変化を体現するためにわずか2週間の撮影期間中に過酷な肉体改造を行なって役に挑んだ安藤のストイックな演技が大きな話題に。
そして第88回キネマ旬報ベスト・テンの主演女優賞や第57回ブルーリボン賞主演女優賞など、安藤への称賛を主にして国内外の映画賞を次々と受賞。さらに口コミで話題が広がり異例のロングランヒットを記録する。公開日の関係から翌年度の選考対象となった第39回日本アカデミー賞では、公開から1年以上を経ていたにもかかわらず、作品賞をはじめ5つの部門で優秀賞を受賞。主演女優賞と脚本賞の2部門で最優秀賞に輝き、安藤の代表作の1本としていまなお多くの映画ファンから熱狂的な支持を集めている。
今回製作された中国版リメイク『YOLO』は、オリジナル版の製作を務めた東映と東映ビデオに中国サイドからオファーが届き実現したもので、武監督と足立、佐藤現プロデューサーといったオリジナルスタッフが監修に入りながら開発が進行。中国歴代興収ランキング第3位の大ヒット作『こんにちは、私のお母さん』(21)で監督&主演を務めた国民的コメディエンヌのジャー・リンが監督&主演を務めるとあって、公開前から非常に大きな注目が寄せられていた。
公開を迎えた2月10日は、中国国内の映画マーケットにおいて最大の書き入れ時として知られる春節期間。注目作が相次いで公開されるなか、初日から3日間で興収11億8700万元(約237億円)、観客動員数2517万人という破格の成績を叩きだし、2024年の春節期間公開作のNo. 1ヒットに。これまで日本映画の中国リメイク作品の最高成績は、三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』(08)をリメイクした『Too Cool to Kill』(22)の26億2700万元。それを遥かに超える勢いで大旋風を巻き起こしている『YOLO』の日本公開は現時点で未定。今後届けられる続報に乞うご期待!
文/久保田 和馬