【第96回アカデミー賞】宮崎駿監督作『君たちはどう生きるか』オスカー受賞の瞬間は?鈴木敏夫が「ナウシカ」続編への期待にも回答
宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』(公開中)が、現地時間3月10日(日本時間3月11日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催された第96回アカデミー賞授賞式で長編アニメーション映画賞を受賞。第75回アカデミー賞にて『千と千尋の神隠し』(01)で同賞を獲得以来、21年ぶりの快挙となった。受賞直後にスタジオジブリスタジオにてプロデューサーの鈴木敏夫が記者会見を開いた。
宮崎監督による10年ぶりの最新作は、宣伝などは行われず、映画の内容に関する情報はほとんど明かされなかった。この方法をとった理由について「静かな形で公開して、静かな形で興行するというのは関係者にとってはありがた迷惑(笑)。でも、宣伝をしなくてお客さんが来なかったら、それはそれで仕方がないと思っていて」とニヤリ。これまで作品の宣伝活動で「宮崎監督は一生分のインタビューを受けたと思う」と話した鈴木Pは、「作りたいものを作って(宣伝活動をしなくても)バチは当たらないのでは?」と考えたと素直な思いを明かした。
今後の制作予定は「白紙です!」と回答。本作の制作は「実作業7年、準備を含めたら10年かかっています。疲れを取る時間が必要。その上で考えたい。世代交代もあるかもしれないし、なにが起きるかわかりません、という状況です」とスタジオの現状を丁寧に伝える場面もあった。話題になっている「第96回アカデミー賞」のライブストリームに登場した宮崎監督のヒゲについて言及する場面も。「僕が『切ったら?』と言ったんです。ヒゲがあると立派そうに見えるので(笑)。最初は嫌がっていたけれど、ヒゲを剃った後は鏡を気にするようになりました」と宮崎監督の変化に触れる。ヒゲを剃り、若返った、別人のようだという声もある宮崎監督について「目の前を生きている。過去でも未来でもなく、いつもいまとここ(目の前)だけに集中。それが若さの秘訣なのかな?」と分析した。
いま、鈴木Pは宮崎監督の好きなようにさせたいという思いが強いようで「もう一度長編映画をやるのは簡単なことではない」としながらも、本人からの希望があれば全力でサポートすると宣言し、「短編アニメ。そういうのをやってもいいのかな、なんて思っています」と現実味のある提案もしていた。
国際長編映画賞にノミネートさたものの、受賞を逃したヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の『PERFECT DAYS』(公開中)について「おもしろく観ました」と微笑み、「自分の潔癖度はどの程度なのかを問われている気がしました。世界で大きなテーマになっていることのひとつを堂々と映画にしたことを評価したい。アメリカ(アカデミー)で評価されなかったのは残念です」と話した。
「なんでも答えたい!」と話した鈴木Pは、40年前の1984年のこの日、3月11日に公開された『風の谷のナウシカ』の続編への期待の声について、「続きをやるかどうかは、その機は逃しましたね」とキッパリ。「ジブリの運命が決まった日にも関係しています。『ナウシカ』が公開され、おかげさまで大ヒット。普通なら『パート2』をという話になるけれど、徳間康快という人はそれを言わなかった。常に新しいものを求めていたから。その精神を現在まで受け継いでいるのだと思います」と説明し、続編の可能性を否定した。
長編アニメーション映画賞受賞の瞬間は、約50人のスタッフが生中継で授賞式を見守り、英語のタイトル『The Boy and the Heron』の『The Boy』まで読み上げられた瞬間に喜びの声と拍手が起き、涙を浮かべるスタッフの姿も。ハイタッチや肩に手を添えるなどして、お互いを労っていた。
また今回の受賞を記念し、本作の【英語吹替版(日本語字幕付き)】上映が決定。昨年、米配給会社のGkidsが北米公開に先立ち吹替声優を発表した際、ロバート・パティンソン、福原かれん、フローレンス・ピュー、ジェンマ・チャン、クリスチャン・ベール、デイヴ・バウティスタ、ウィレム・デフォー、マーク・ハミルといった超豪華な顔ぶれだったことが注目を集めていただけに、さらなる話題を呼びそうだ。『君たちはどう生きるか』の英語吹替版(日本語字幕付き)は、3月20日(水・祝)より全国の劇場で上映スタートする。
取材・文/タナカシノブ
※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記