『かいじゅうたちのいるところ』に見る計算された“キモカワ”

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『かいじゅうたちのいるところ』に見る計算された“キモカワ”

『マルコヴィッチの穴』(99)や『アダプテーション』(02)の奇才スパイク・ジョーンズ監督が絵本を実写化した『かいじゅうたちのいるところ』(1月15日公開)。今回は奇想天外な“とんでもワールド”ではなく、温かみのあるファンタジーに仕上がった。とくにかいじゅうたちの“計算された”かわいさに胸キュン!

原作の力はもちろん、それを十二分に引き出したジョーンズ監督の手腕は大きい。彼はキモカワ系キャラの見せ方を熟知している。このCG全盛期に着ぐるみ&パペットの手法を取り入れたところがナイス。また、かいじゅうの濃いキャラ設定も最高だ。

メインのかいじゅう・キャロルなんて、あんなに図体がでかいのに繊細だし、無邪気にダンスを踊ったりする。見た目のギャップが産み出す効果が絶大なのだ。少年マックスに寂しげな目線で「孤独をなくせるの?」なんて尋ねたりするんだから、庇護欲をかきたてられない方がウソ! しかもかいじゅうのくせしてメソメソするシーンもあり、思わず「私が守ってあげる〜」と抱きしめたくなる。

絵本の映画化作品だけど、本作は断然大人向け。ジョーンズ監督が「僕は子供向けの映画ではなく、子供時代を描いた映画を作ろうとしたんだ」と、断言しているのも納得。

まだ寒い日が続く中、『かいじゅうたちのいるところ』を観れば、心にポッと灯りをともされたような気分になれる。大人だからこそ童心にかえって絵本の世界観に浸りたい。【Movie Walker/山崎伸子】

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