ヨルゴス・ランティモス&エマ・ストーン『憐れみの3章』“愛と支配”の人間模様を描きだす3章の本編映像
ヨルゴス・ランティモスが監督を務め、エマ・ストーンが主演する映画『憐れみの3章』(9月27日公開)から本編映像が到着した。
本作はストーンが『ラ・ラ・ランド』(17)に続く2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞した『哀れなるものたち』(23)に続き、再びランティモスとタッグを組んだ3つの章から構成される映画。キャストには、ストーンのほかウィレム・デフォー、マーガレット・クアリーが再集結。さらにジェシー・プレモンス、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファーといった実力者が勢ぞろいした。共同脚本に『籠の中の乙女』(09)、『ロブスター』(15)、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(17)のエフティミス・フィリップとの最強タッグが復活。ランティモスならではのユーモラスでありながらも時に不穏で予想不可能な、独創的世界を描きだす。
新作の公開直前となる本日9月23日はランティモス51歳の誕生日。そんな記念すべき日に3つの章から構成される本編映像が解禁。まず第1章となる「自分の人生を取り戻そうと格闘する、選択肢を奪われた男」からは、プレモンス演じるロバートが、デフォー演じるレイモンドの社長室で会話を交わすシーンが公開。「遠慮なくかけたまえ」と声をかけるレイモンドは、続けてロバートの容姿について触れ「痩せた男ほどみっともないものはない」と痩せすぎていることについて指摘。それに対して前より太ったと反論するロバートだったが「君の1週間の食事計画を見直さなければ」と言って聞く耳を持たない。支配と服従の関係が垣間見える映像だが、デフォーはこの2人の関係について「ヨルゴスは、結婚で見られるような感情面での関係性を、2人の男のビジネス上の関係に置き換えたのです。そうすることで私たちが別な文脈で受け入れるように育ってきた社会的慣習を発見することができるのです」と分析していて、ランティモス監督が古典的なテーマを覆し、皮肉や盲点を浮き彫りにしているのだと語っている。
続いて第2章となる「海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官」からは、妻のリズ(ストーン)と夫のダニエル(プレモンス)が友人夫婦とディナーを楽しむシーンが解禁。海難事故で失踪していたリズは、奇跡的に生還した後から別人のような言動を取るようになっていた。以前はタバコを吸わなかったはずだが、友人のニール(アティエ)へタバコを急におねだり。ニールからの問いかけに「全然吸わない。試したこともない。でも吸いたくなった」と答えつつ、慣れた手つきでタバコをゆっくりと吸いこむ。さらに「そろそろ寝室へ行く?」と持ち掛けるリズ。突拍子もないこの誘いに3人は思わず沈黙し、リズの不可解な言動をいぶかしむ様子が映しだされる。
そして第3章目となる「卓越した宗教指導者になるべく運命付けられた特別な人物を懸命に探す女」からは、ある1人の女性を人生をかけて探すという指名を負うエミリー(ストーン)とアンドリュー(プレモンス)が、ダイナーでその手がかりとなる女性レベッカ(クアリー)に出会うシーンが公開。カウンター席からの視線に気づいたアンドリューが「あの女がじっと見てる」と警戒するようにささやくと、その女性は2人のそばまで近づいてきて自己紹介。続けて「姉のルースは獣医師です。お探しなのは姉でしょう」とエミリーたちの探す人物を突然教えてくれたのだ。それに対しアンドリューは偽名を名乗り「僕たちが探しているのは広く居心地のいい手頃なアパートだ」と自分たちの目的がバレないように嘘をつく。本章で双子のルースとレベッカを演じたクアリーは「自分の人生を支配すること、他人の人生を支配すること、誰かに支配されていると感じること、支配を見つけようとすることなど、さまざまな側面があります」と本作で共通して描かれる“支配”という1つのテーマについて紐解いている。
ランティモスならでは独自の感性と視点によって“愛と支配”にまつわるいびつな人間模様を活写する本作。未知なる物語の全貌はぜひ劇場で確認してほしい!
文/スズキヒロシ