『M3GAN/ミーガン』(23)や『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(23)のブラムハウス・プロダクションズが放つ最新ホラー『イマジナリー』(11月8日公開)のトークイベントが10月29日に東宝東和試写室で開催。『恐怖人形』(19)や現在放送中のドラマ「ヒロシの心霊キャンプ」など、ホラー作品の監督を務める宮岡太郎と、“ホラー映画感想屋”で声優の野水伊織が登壇し、MCの杉山すぴ豊とともに、本作とブラムハウス作品の魅力を語りつくした。
宮岡監督は本作を観た感想について「誰しも子どものころには空想の友だちがいたと思います。こうだったらいいな…という理想を追い求める自分がいて、そういう理想がどんどん肥大化したりねじ曲がっていったりするとこういう怖い目にあうことがあるんだな、という意味で普遍的な作品として拝見しました」とコメント。
野水は本作について「私はおもちゃが好きなので、チョンシーと遊べるならずっとあそこにいたいなと思ってしまいました(笑)。また、今回はブラムハウスのホラー作品の中でも大人向けの作品かと。ジェシカという主人公がステップママとして、子どもに受け入れられていくために成長する話や、そこで娘とのシスターフッド的な関係性を築くなど、女性にとってより共感できるポイントがあると思いました。親との確執などが刺さったり、ドラマ性が豊かな作品だと思いました」とそれぞれが作品について熱く語った。
続いて、最近のブラムハウス作品の共通テーマでもある「家族×ホラー」について、宮岡は「最近のブラムハウス作品の十八番という印象があります。雑誌で拝見したのですが、ブラムハウスには6つの掟があり、そのなかで、『人間ドラマを重視している』という掟があるようです。『セッション』などの人間ドラマがある一方で、ドメスティックな家庭で起こる恐怖と人間ドラマを描いた『インシディアス』という鉄板のシリーズもあります。またブラムハウスでも一番怖いくらいおぞましい映画の『フッテージ』もしっかりと家族の絆が描かれた作品です。そういったブラムハウスがやり続けてきたことの1つを新たな形を見せてもらった作品だと思います」と高評価だ。
さらに宮岡は「空想の中に入り込むというシチュエーションがこの作品ならではで、想像の世界の中に入り込み、不確かな世界の恐怖や楽しさというのを味わいながら展開されていく部分がおもしろいと思いました」と『イマジナリー』の魅力についても語る。
野水は「社会派なテーマもありつつ、そうじゃなくて殺してくれ!みたいなホラーを観たい方もいると思いますが(笑)、そういう観点の切り込みは、いまの時代ならではと思います。この作品はホラー入門として金曜の夜にポップコーンを食べながら観るのにもいい作品ですし、大人が得るものがある作品だと思います」と自身の体験を交えてコメント。
宮岡も続けて「ホラー初心者の方にもおすすめですし、ホラーの上級者の方にとってもおもしろい映画だと思います。精神世界は不確かなもので、映画で登場する階段や無限に広がる廊下など、ある意味では想像力の恐ろしさというのは無限大だと思います。殺人鬼が襲ってくる映画より、人によっては恐ろしいなにかを感じられるところも懐が広いです」と述懐。
本作で可愛らしいテディベアを怖いものにするというモチーフについて、野水は「ホラー映画好きからしたら、チョンシーは家にいてほしいと思いますよね(笑)」とチョンシーへのラブコールを送るが、宮岡は「目のビー玉感が恐ろしかったです」と笑う。
また、「こわいはなし付き試写会」という名目にちなんで、それぞれの身のまわりで起きた怖い話についての話題に。宮岡は、「幼少期を振り返ってイマジナリーフレンドがいたかと記憶をたどってみました。子どものころにすごく好きな人形があって、ハンドパペットで遊んでいたことを思い出して、先日実家に帰った時に、部屋のぬいぐるみ置き場を探したんですが、ほかの人形はあるのに、その人形だけが見つからなかったんです。実家の母親に尋ねると『あんたがそんな人形で遊んでいた記憶がない』と言われました。自分の存在が不確かになる恐怖を感じましたね」とまさかの“イマジナリー”体験を披露し、会場をざわつかせる。
野水は「もしかしたら死んでいたかもしれないということがありました。幼いころ群馬の桐生で生まれて、おばあちゃんと母と住んでいて、週末にデパートへ行った時にブロックなどがある遊び場によくいたのですが、おばあちゃんが自販機に飲み物を買いに行った隙に、男の人が私を誘拐しようと手を伸ばしてきたんです。『あんた、なにやってるの!』とおばあちゃんが助けてくれて事なきを得たんです。実はその時に、群馬と栃木で小さい女の子がさらわれて殺されるという『北関東連続幼女誘拐殺人事件』という未解決の事件が起きていて、もしおばあちゃんが助けてくれなかったらと思うととても怖かったです」と幼少期のリアルな恐怖体験を回顧し、宮岡たちを驚かせた。
イベントの最後に、野水は「ぜひお子さんと一緒に家族で観てほしいと思っています。私自身が『怖いは楽しい』で生きている人間で、元々は苦手だったけれど観始めてから怖いジャンルが楽しいと思えるようになったので、そういうきっかけにもなると思いますし、かわいいくまちゃんも出てくるので、ぜひみんなで観ていただきたいです」と、宮岡は「空想上の家族、友だち、恋人を妄想したことがあるすべての方に刺さる作品になっていると思います。スリルとエンタテインメントを突き詰めたブラムハウスの良さ、ジャンプスケアとどんでん返しと人間ドラマ、全部欲張ったホラー映画になっています」とアピール。イベントは、終始笑いと時々悲鳴が起きながら、大盛り上がりのまま幕を閉じた。
文/山崎伸子