映画『雨の中の慾情』(11月29日公開)のプレミア上映舞台挨拶が11月18日、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、成田凌、中村映里子、森田剛、竹中直人、片山慎三監督が登壇した。
本作は、今年デビュー70周年を迎えた漫画家、つげ義春の同名短編をもとに、片山監督が監督、脚本を務め、ラブストーリーとして映画化。ほぼ全編を台湾で撮影し、二人の男と一人の女の切なくも激しい性愛と情愛が入り交じる、数奇な物語を描き出す。
片山監督は「つげさんの原作を台湾でやったら、みんなが見たこともない風景が見られるんじゃないか」というのが(映画化の)決め手だったと振り返る。脚本、演出でのこだわりについては「撮影する場所の風景、ロケ場所に演者のみなさんが立った時に、どのようなムードができるのかが重要だという思いがありました」と説明した。
片山監督の演出について「毎分、ブラッシュアップする感覚」と話した成田は、常に鮮度を保ちながら楽しんでやっていると笑顔に。成田のこのコメントに片山監督は「撮っていくなかで、いろいろとアイデアが浮かんで…。終わらなくなります(笑)。どこかで終わらせなきゃいけないのに、どんどん面白くなっちゃって」とニヤリとしながらも充実感を滲ませていた。中村が「前日に脚本を読んで、このシーンを撮るんだという気持ちで入っても、脚本に書かれていない物語が用意されていることが多くて(笑)。毎日、今日はなにが起こるんだろうってドキドキしながら毎日撮影に行ってました」と、次々と新しいアイデアが飛び出す撮影を振り返ると、成田も「行かなきゃわからないっていうね(笑)」と頷きながら語っていた。
森田は「行ったら逃げられない、やるしかないという感じ」と片山組の現場の印象に触れる。竹中も「すごく粘り強い」と片山監督の撮影方法に言及。「そっと近づいてきて、ボソッと(新しいアイデアを)言う。それを何度も何度もやるから、だんだん体が慣れてくる。監督の息遣いを感じる現場はなかなかない」と片山監督の現場の動きを解説しつつ、「夜のシーンなのに、朝から呼ばれちゃう。行かなくていいんじゃない?って時でも行って待ってるんです。すると助監督が来て『すみません、撮影なくなりました』って(笑)」とぼやきを交えながら振り返る場面も。夜のシーンなので朝から待機の必要はないと思いながら、「『そりゃそうだろ!』って思いながらも、台湾の(スタッフの)人に印象悪くなっちゃいけないので」と穏やかな笑顔で受け入れていたと明かし、笑いを誘っていた。
竹中が「忘れられない片山慎三の現場を経験できた」とも補足すると、片山監督は「褒められているのか、褒められていないのか、ちょっとわからないけれど」と戸惑いながらも、「ありがとうございます」とキャスト陣のほうに体を向け、深々とお辞儀。「やればやるほど、言えば言うほど良くなっていく。引き出しの多いみなさんだったので、というのがあって」と次々と現場でリクエストしてしまった理由は、キャストの力量があったからだと説明していた。森田が「監督がモニターを見てニヤニヤしている顔が印象的でした。この人のために頑張ろうって思えました」と振り返ると、片山監督は「森田さんも、僕が話しかけに行くと笑顔で迎えてくれて」とニッコリ。お互いにニヤけていたと話しながら、ステージ上でも顔を見合わせニヤニヤし合っていた。
片山監督は、成田演じる主人公の義男が住む家の撮影についても言及。こちらの家は、地元で撮影に協力してくれた方の実家だという。「両親が住んでいて、母屋とは離れた場所に建っている家を借りました」とし、劇中に登場する部屋を覗くシーンのために壁を壊す必要があった際には、「『壊していいですか?』と訊いたら、『いいよ』って言われて。壊して撮影しました」と撮影秘話を披露。いまもその覗き穴は空いたままだとし、協力的に動いてくれたこと、協力してくれた方の映画愛に感謝していた。
最後の挨拶で竹中は「観れば観るほど味わい深い映画」とし、2回、3回と噛み締めるように観てほしいと呼びかける。森田は「やっぱり、愛!」と微笑み、「この映画に愛を感じています。みなさんにも感じて欲しいなと思います」とアピール。中村は物語だけでなく、映画が持っている力をたくさん感じてほしいとし、「体で観ていただけたらいいなと思っています」と体感する映画とおすすめ。片山監督は「深く考えず、予測せず、映っているものを感じながら観入ってほしい。2回3回観るとより魅力が増していく。何回も観てるけれど、僕は6回くらいが一番よかったです!」とリピート鑑賞をリクエスト。成田は「みんなで詰め込んで作ったので、ただただ楽しんでもらえる。存分にくらって帰れます!」と自信を見せ、「ヒットするかどうかはみなさんにかかっているので、いろいろとお願いします」とクチコミでの宣伝のお願いをほのめかし、笑顔でイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ