未知のウイルスに“最前線“で挑んだ医師や看護師たちの物語『フロントライン』2025年6月公開
2020年に世界的流行(パンデミック)を引き起こした新型コロナウイルス。新型コロナウイルスを事実に基づく物語としてオリジナル脚本で映画化した日本初の作品となる『フロントライン』が2025年6月に公開されることが決定した。あわせて、監督、メインキャストが解禁となった。
物語の舞台は、2020年2月3日に横浜港に入港し、その後日本で初となる新型コロナウイルスの集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗客乗員は世界56ヵ国の3711名。横浜入港後の健康診断と有症状者の検体採取によって10人の感染者が確認されたことで、日本は初めて治療法不明の未知のウイルスに直面することとなった。この状況のなか、最前線に駆けつけたのは、家族を残し、安全な日常を捨てて“命“を救うことを最優先にした医師や看護師たちだった。
当時日本には大規模なウイルス対応を専門とする機関は存在せず、急きょ対応することになったのは災害医療を専門とする医療ボランティア的組織のDMAT(ディーマット)だった。DMATとは、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)を略した、医師、看護師、医療事務職で構成され、大規模災害や事故などの現場におおむね48時間以内から活動できる専門的な訓練を受けた医療チームのこと。地震や洪水などの災害対応のスペシャリストではあるものの、未知のウイルスに対応できる経験や訓練はされていない医師や看護師たちだった。
本作の企画、脚本、プロデュースを務めたのは、ドラマ「白い巨塔」や『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(18)で、医療現場の最前線にある人間ドラマをエンタテインメントに昇華させてきた増本淳。2023年には東日本大震災による福島第一原発事故を政府、電力会社、原発所内のそれぞれの視点から描いたNetflixドラマ「THE DAYS」で企画、脚本、プロデュースを務めた。本作に挑むにあたり自身による300ページを超える取材メモから、いままで知られることのなかった船内の複数のエピソードを丁寧に脚本にまとめ上げた。企画のきっかけは「クルーズ船に乗船した医師との会話」だったと振り返り、さらに「その医師が語ってくれた船内の実態は、世の中に知られていないことばかりで、驚くべきことや涙なくしては聞くことのできないエピソードの連続でした」と語った。情報解禁にあたり「この知られざる愛と勇気の物語を一人でも多くの人に共有してもらいたい」と想いをコメント。
監督は『生きてるだけで、愛。』(18)で劇場長編映画デビューし、二作目となる『かくしごと』(24)が第49回報知映画賞で最多ノミネートされた関根光才監督。本作に参加した理由を「稀有で、挑戦的で、私たち皆が共有すべき作品になる。この作品に参加できるなら、それはフィルムメーカーとしての重要な責務だとも感じた」と自身の強い思いと覚悟を語った。
ダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入港した日から乗客全員の下船が完了した2月21日までが描かれる本作で、メインキャストを務める4名が公開された。未知のウイルスに立ち向かうDMATの指揮官、結城英晴を演じた小栗旬は、本作出演を決めた理由を「当時自分が知らなかった(新型コロナウイルスと)戦った人たちがいるという物語に非常に引き込まれましたし、映画として作るべきものだなと感じた」とコメント。現場を終えた直後には「日常を取り戻したこの状況の中で、忘れてはいけないかなり大きな出来事だなと思うし、それを映画として届けられるという事は僕たちにとっても挑戦的だった」と本作が意味する“チャレンジ”についても触れた。完成した本編を鑑賞した小栗は「すごく力のある映画でした。全員が主役の映画になっており、参加できたことを誇りに思います」と本作への自信をのぞかせた。
また、初共演の松坂については「桃李くんは一緒の現場にいてくれる安心感が強かった」、26年ぶりの共演となる窪塚については「若い頃から僕にとってはヒーローみたいな俳優さんなので今回肩を並べさせてもらってやっと願いが叶ったみたいな自分にとっては大きな出来事」、初共演の池松については「とっても尊敬する俳優さんなので目の前で芝居見れてラッキーって思っているくらい」とそれぞれ嬉しそうに語り、「今回共演した方々は元々リスペクトのある俳優さんばかりなので僕からしたらこんな幸せな場所はない」と現場を振り返った。
小栗演じる結城と対策本部でぶつかり合うこととなる厚生労働省から派遣された役人、立松信貴を演じた松坂桃李は、「映像化して形に残すという事に参加する意義があるなと思い、お話をいただいた時に是非やらせてください、という思いがあった」と当時の率直な思いを振り返る。初共演だった小栗については「一人一人に対して真摯にコミュニケーションを取っていらっしゃるし、現場での立ち姿も含めて、小栗さん全体が作品を包み込もうとする、そういう温かさを持った方。それがすごく(小栗演じる)結城とリンクする部分がある」と小栗が演じる主人公に重ねて見ていたことを明かした。本編鑑賞後には「観た方の中に記憶として残り、この映画を心の中で持ち続けられるような作品になってほしいです」と改めて本作に込めた想いを語った。
地元である岐阜に家族を残し、横浜に駆けつけたDMAT隊員、真田春人を演じた池松壮亮は、出演を決めた理由を「自分がフロントラインに行ってなにが出来るかわからないけれど、少しでもあの時にあった事を追体験するべき」と語り、愛する家族を残し、船内で診察を続ける医師を演じるにあたり意識したことについて「それぞれに家族があって、様々な背景があって、色んな思いを持ってあそこに立ってくれていたこと、そういう事が自分の身体を通して浮かび上がってくる事を目指した」と役と向き合う自身の思いを明かした。本編鑑賞後には「大クラスターに立ち向かった名もなき勇者たちの奮闘にスポットを当て、コロナによって浮き彫りになる様々な人間性を映し出し、思いやりや善意という人に与えられた希望を浮かび上がらせ、深く心に残る物語になっていました」と自身が演じた役と物語を重ねてコメントを寄せた。
小栗演じる結城とは東日本大震災でもともに活動し、“戦友”とも呼べる過去を持つ仙道行義を演じた窪塚洋介は、撮影時、小栗とはドラマ「GTO」以来26年ぶりの共演だったことにも触れ、「旬が声をかけてくれて、新型コロナウイルスの話なんだけど興味があるかって。ちょっと警戒したんだけど台本に感銘を受けて、これはぜひやりたい」と小栗からの出演オファーだったエピソードを披露した。意外にも長いキャリアで「医師の役はやったことがなかった」と本作がキャリア“初”の医師役だったことも背中を押したと明かした。本編鑑賞後には「とても素晴らしい作品でした。皆で乗り越えたコロナ時代がまだ生々しいので、登場人物たちそれぞれ色んなシーンでたくさんの思いが溢れて涙に変わりました」と当時と重ねて本編に涙したとコメントを寄せた。
あわせて解禁されたビジュアルは、劇中の4人それぞれの視線の先にある“最前線“を表情だけで構成したもの。結城(小栗)には目の前の命を救うことと仲間の安全を願う“葛藤”が、立松(松坂)にはなんとしても国を守らなければいけない“信念”が、真田(池松)には家族を残し未知のウイルスに立ち向かう“不安”が、仙道(窪塚)にはここから絶対に逃げられないという“覚悟”が垣間見ることができる。「最前線で守るべきは、この国か、目の前の命か。」といった衝撃的なコピーとともに4人のそれぞれのドラマを感じさせるビジュアルに仕上がった。なお、解禁前日にはマスクをした彼らの目元だけのビジュアルに「その日から、世界が変わってしまった。」のコピーだけが入った先行ビジュアルが解禁されていた。
また、ビジュアルと同時に解禁されたシズルリールは、劇場予告編や本編のダイジェスト映像と違い、本編映像、メイキング映像、メインキャストのインタビューで構成された先行特別映像となっている。冒頭、誰もいない船内の廊下に「事実に基づく物語」の文字が浮かび上がり、DMAT指揮官の結城が出動要請の電話を取るところからスタート。「いま我々が見放せば乗客は助かりません」と訴え、「船内で怯える3700人にいち早く医療を提供したい」と答える結城のセリフから、あの時“最前線“で起きていた一刻の猶予も許されなかった状況と彼の“葛藤”がリアルに映しだされていく。一方、厚労省の立松は「国内に(ウイルスが)持ち込まれることなんてないように」、「誰かにお願いするしかないんですよ」と感情を見せず言い放つシーンがあり、結城とは立場の異なるプレッシャーの中で自身の“信念”を口にするシーンも。結城と強い信頼関係にある仙道は時間を追うごとに悪化する船内の状況をなんとか打開しようと奮闘し、時に結城に対して「DMATも撤退しようか!」と感情をぶつけるが、「やれることは全部やる、でしょ?DMATは!」と人一倍の“覚悟”を示す。岐阜県に愛する家族を残し、船内に乗り込んだ真田は、結城に対して「隊員の家族のことは誰が考えてくれるんですか?」と“不安”を吐露するセリフがあり、我々の知らない物語を匂わせる。
未曾有の危機のなか、最前線で命を守るため戦った人々の物語を描く『フロントライン』。小栗旬ら豪華キャスト陣によって紡がれるヒューマンドラマに期待が高まる。