映画『室町無頼』は「5、6回観ても飽きない!」IMAX公開記念トークショーで入江悠監督&春日太一氏が見どころを語る
垣根涼介の同名小説を大泉洋主演で実写映画化、実在の人物・蓮田兵衛が企てた知られざる戦国前夜の戦いを描く時代劇アクション・エンタテインメント映画『室町無頼』(1月17日公開)のIMAX公開記念トークショーが1月10日、T・ジョイPRINCE品川にて開催。入江悠監督と時代劇研究家の春日太一氏が登壇した。
日本史上初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ一度だけその名を留める男・蓮田兵衛の元に結集した「アウトロー=無頼」たちの知られざる闘いをドラマチックに描いた本作。東映制作の実写映画が大画面で迫力の映画体験を楽しめる上映システム「IMAX」で上映されるのは初めてで、入江監督にとっても自身の監督作品がIMAX上映されるのは初となる。
入江監督は「この映画はかれこれ8年掛かって、ようやく今日を迎えられます」と本作の公開にしみじみ。続けて「普通、初日は俳優さんとやるんですけど(笑)、今の日本の時代劇を語らせたら、この人を超える怖い人はいない、という春日太一さんに来ていただいています」と春日氏を紹介すると、その春日氏も「皆さんもたぶん俳優さんが来るとかそういうのを期待していると思うんですけど、無関係のおじさんが来ちゃいまして、本当に申し訳ない(笑)」と自虐した。
「怖い人」と紹介された春日氏だが、本作については「めちゃくちゃ面白かった」と大絶賛。上映を待つ観客を前に「情報を言えないのが難しいんですけど」としつつ、「入江監督、すごいです。『すごい』のレベルが、桁が違いますよ。日本映画の歴史上でも相当びっくりすることをやっちゃっていますよ」と入江監督を称賛した。
また、入江監督は本作の殺陣シーンに触れ「実は普通の刀、いわゆる時代劇に出てくる刀で戦うのって、大泉洋さんと堤真一さんぐらいで、それ以外はみんな違う武器にしている」と説明。そして「長尾謙杜くんの六尺棒が、ユニークで面白いと思いますけど、六尺棒の戦い方って知らないじゃないですか。そこを『どう作るの』みたいな」と長尾謙杜が演じた才蔵のアクションを振り返った。
春日氏は「六尺棒がいる上に、短刀がいて弓がいて。弓を持っている人も鉈で来ますからね。みんなすごいんですよ」と頷き、「『この作品を見る前に見どころはここ』とか言うんですけど、はっきり言うと(見どころが)多すぎるんですよ」とコメント。「皆さんも1回観たら絶対に『面白い』って思うはず」と断言し、「こんなに1カット残らず全部工夫している映画って『ゴッドファーザー』くらいのものでしょう」と表現した。
さらに春日氏は「最後の一揆シーンがあるんですけど、見れば見るほど狂ってる」と言い、画面の奥で小さく映った登場人物に注目。入江監督は「後ろの方は姿が小さくなるじゃないですか。だからちょっとオーバーにやらないといけない」と明かした。すると春日氏は「さっき武田梨奈さんとお話してきたんですけど、武田さんもおっしゃっていましたけど『私たちを含めて映っていないのは分かっているんですけど、みんなやっていた。私たちより後ろの人たちはもっとやっていた』って。やっている人たちの異常な熱気を浴びてほしい」と画面奥の派手なアクションへの注目を呼びかけ、「一人ひとりの異常な人たちを観ると、たぶん5、6回観ても飽きない。今のところ6回観ていますけど、全然飽きてないですから」と伝えた。
そして入江監督は「時代劇というものがどんどん減っていっている。やっぱり一つの壁があるじゃないですか。それを超えて、東映とか大手の映画会社に『やっぱり時代劇面白いよね』ってなってほしい」と時代劇への思いを吐露。「もっと時代劇を作らないと、長尾くんとか六尺棒を今後使わないですよ。人生に役立たないですよ、もう(笑)」と六尺棒を学んだ長尾の活躍を願いつつ、「長尾くんは(今作で)刀持ってないから、次に時代劇に行っても棒使いしかできない(笑)」と笑っていた。
最後には入江監督が「もしつまらなかったら僕のせいなんですけど、この映画に関わった俳優、スタッフはとんでもないことをやってくれていると思っている」と力を込めつつ、「もし『ここ気に入ったというところがあったら感想を書いていただけると、僕らの次の糧になりますので、よろしくお願いします」と呼びかけてイベントを締めくくった。
取材・文/山田健史