大泉洋、『室町無頼』長尾謙杜への絶賛の声が多すぎて“ぼやき節”「すぐにエゴサーチやめました!」
垣根涼介の同名小説を入江悠監督が映画化した『室町無頼』の初日舞台挨拶が1月17日に丸の内TOEIで行われ、大泉洋、堤真一、長尾謙杜(なにわ男子)、松本若菜、入江監督が出席した。
本作は、大飢饉と疫病の連鎖となった混沌の室町、“応仁の乱”前夜の京(みやこ)を舞台に、日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史にただ一度だけその名を留める男、蓮田兵衛(大泉)と、彼の元に結集した“アウトロー=無頼”たちの知られざる闘いをドラマチックに描く本格アクション時代劇。入江監督は「丸の内TOEIは今年の7月に幕を下ろすということで」と舞台挨拶の場所となった劇場の閉館について触れながら、「約65年の歴史で、『室町無頼』が最後の時代劇になる。本当に光栄です」と感無量の面持ちを見せた。
2016年の企画始動から、9年の時を経ていよいよ初日を迎えた。コロナ禍の影響もあり、一度は企画がストップしたこともあったという。大泉は「一度は『この映画はできないということになりました』と言われましたので、残念に思っていたんですが、どこかの現場で堤さんにお会いした時に『洋ちゃん、あれ残念やな。やりたかったな』という話になって。私も『そうだよな』と思って、プロデューサーに『なんとかやりましょう』ということで実現して」と道のりを振り返りながら、「改めて僕のおかげ」と茶目っけたっぷりに語り会場も大爆笑。
兵衛役の大泉が本格的な殺陣とアクションに初挑戦したことも話題となっているが、「もっと早くやれていれば、ここまで僕と堤さんの体がボロボロになることもなく」と満身創痍で挑んだアクションについてボヤきつつ、「でもそうすると今度はね、長尾くんがあまりにも子どもすぎることになる。いまでなければ撮れなかった。この布陣が揃うのを待っていたのでしょう」と機が熟したのはまさにいまだったと、力を込めていた。
兵衛に拾われ、身も心も成長していく才蔵役を演じたのが長尾だ。長尾は「大泉さんとの師弟関係にも注目していただければ」とアピール。また才蔵を鍛える唐崎の老人役を柄本明が演じているが、柄本にも「お世話になった」という長尾。柄本は自身の撮影が終わってからも現場を訪問することもあったそうで、長尾は「『元気かな』と観に来てくださった。本当の師匠のような感じ」と感謝を述べた。大泉は「めちゃくちゃ愛されているよね。そんな人でしたか?」と長尾が柄本から愛情を傾けられていると嫉妬まじりに話しながら、「(なにわ男子の)ライブも観に行ったんでしょう?」と続けた。長尾は「そうなんですよ!『室町無頼』の顔合わせの前に、柄本さんがライブを観に来てくださった。そこが初めましてだったんです。ご招待させていただいたら、本当に来てくださった。『楽しかったよ、ありがとう』と帰られた」と当時の様子を紹介すると、大泉は「(自身の所属する)『TEAM NACS』なんて、観に来てもらったことない!」と悔しそうに訴えていた。
またステージでは、無頼たちが起死回生の大逆転に挑む映画の内容にちなみ「これまでに一番大逆転したこと」「今年大逆転を狙いたいこと」をフリップを使って発表するひと幕もあった。「暗黒の剣道部」と書いた入江監督は、「高校で3年間いた剣道部が地獄のようだった。明日が来るのが怖いというくらい、厳しい剣道部だった」と回顧。「なんのために入ったかわからなかったけれど、それが本作によってようやく逆転した。大泉さんの最初の殺陣の練習の時とかも『あ、これはちょっとヤバいぞ』と思ったり、秘密の特訓の後にものすごい上達をされて『これは大丈夫』だとわかったり」と苦い経験が報われたと喜びをにじませた。
芳王子役の松本は「蚊」だといい、「昨年の夏、絶対に刺されないと思ってあらゆるものをやった。でも女優なもので(笑)、肌に優しいものを使っていたので、効かなかった」と蚊よけ対策に失敗してしまった様子。「今年はガチのやつを使って、絶対に刺されない。大逆転したい」と意気込んだ。兵衛の悪友にして宿敵となる道賢役の堤は、「結婚」と回答。「みんな俺が結婚するとは思っていなかった」とまさかの結婚に周囲も驚いていたと話す。「家族がいるのは楽しいこと」だという堤に、大泉は「なぜ結婚に踏み切ったんですか」と興味津々で、堤は「この人、いいかなと思って」とポツリ。大泉はさらに「義理のお父様が怖いって言っていた」と掘り下げ、堤は「優しくていい人なんだけど、最初の挨拶に行くのが怖かった。酒を飲んでしか、行けなかった」と意外なエピソードを披露していた。
そして長尾は「大泉さんといろいろ逆転してみたい!」と笑顔。「大泉さんは北海道出身。僕は大阪出身。大阪で生まれた大泉さんを見てみたい。どれくらい喋るんだろう、もっと喋るのかなとか、見てみたいなと思う。大泉さんはお歌もやられているので、めっちゃアイドルの大泉さんも見てみたい。いつか『なにわ男子』とかとコラボしたりできたらいいな」と想像を膨らませると、大泉は「すばらしい。すごくいいです。つまり私が『なにわ男子』に入って、あなたが『TEAM NACS』に入るということね」とご満悦の表情を浮かべ、「うわあ、楽しいと思う。うれしい」と「なにわ男子」への加入を妄想して笑顔が止まらない。
その大泉は「長尾謙杜に勝つ!」という答えをしたためており、長尾とリンクした回答に会場からも驚きの声があがった。本作は1月10日からIMAXで先行上映が行われているが、大泉は「映画の評判が気になって、『室町無頼』はどうなんやとエゴサーチをした。そうしたらまあまあ、こいつの感想しかない!『室町無頼、最高でした!カッコよかった…謙杜くん!って。すぐエゴサーチやめました!」と長尾への絶賛の声ばかりだと吠えて、会場の爆笑をさらう。「今年は本当に、長尾謙杜に勝つ。ここからですよ!」と気合を入れていた。
大泉を中心に笑いの絶えない舞台挨拶となったこの日。最後に大泉は「時代劇でしか表現できないものがある。『室町無頼』でも現代では考えられない世界が描かれていますが、政治に対する不満などは、現代と変わらないものもある。それを民衆の力で変えていくのは、観ていて痛快なものがある映画だと思っています」と胸を張り、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝