D・フィンチャーのNetflixオリジナルドラマ「マインドハンター」は、映画界にふたたび一石を投じるか?
作品を発表するたびに映画ファンを虜にしてきた鬼才、デヴィッド・フィンチャー監督の最新作となるNetflixオリジナルドラマ「マインドハンター」が、いよいよ10月13日(金)から全世界同時オンラインストリーミング配信される。
本作は凶悪な連続殺人鬼や強姦犯を追うために、犯罪者プロファイリングを編み出した2人のFBI捜査官の姿を描いたスリラー作品。代表作『セブン』を思わせるストーリーに、フィンチャー監督ファンはもちろんのこと、スリラー作品ファンにとっても要注目の作品だ。
ミュージックビデオやCMで頭角を表し、90年代から映画界に進出したフィンチャー。これまで監督を務めた10本の長編映画はいずれも高い評価を獲得し、F.スコット・フィツジェラルドの短編小説を原作にした『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』と、Facebookの創設者マーク・ザッカーバーグを描いた『ソーシャル・ネットワーク』ではアカデミー監督賞にノミネートされた。
そんな彼は、2013年に放送が開始された「ハウス・オブ・カード 野望の階段」でテレビドラマに進出。近年、映画にも負けないクオリティの高さや野心的な作品が目立つテレビドラマ界にセンセーショナルを巻き起こしたのだ。そして、本作で再び監督と製作総指揮を務め、時代の先端を行くストリーミング配信ドラマ界に乗り込んでくる。
このように世界的映画監督がNetflixで製作するとなると、今年5月のカンヌ国際映画祭で大きな議論を巻き起こした“Netflix論争”が思い出される。Netflixの製作で、同映画祭のコンペティション部門に出品されたポン・ジュノ監督の『Okja/オクジャ』(配信中)、ノア・バームバック監督の『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(10月13日より配信)に対して、審査委員長だったペドロ・アルモドバルが「映画館で上映されない作品に賞を与えない」と宣言。
それに対し、審査員として参加していたウィル・スミスが異論を唱えるなど、映画作品ないしは映像作品全体の未来について、議論に拍車がかかった。結果的にアルモドバルが発言を撤回し、事態は一時的に収束したが、マーティン・スコセッシやコーエン兄弟といった大物監督が相次いで次回作をNetflixで製作することを発表している以上、今後も度々話題にのぼることだろう。
彼らのように有力なクリエイターが次々Netflixで製作する背景には、前述の『Okja/オクジャ』を監督したポン・ジュノが来日時に語ったように「どんなに大きな作品でもクリエイターに創作の自由が100%与えられる」というメリットがある。
それだけに、映画作品としてではなくドラマ作品として発表される「マインドハンター」であっても、フィンチャーが意図するとおりの仕上がりになっていることは間違いない。構成から台詞回し、そしてフィンチャーの最大の魅力である映像表現に至るまで、彼がイメージした世界の100%を、視聴者は味わうことができるだろう。【文/久保田和馬】